この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の5000人を超える受講生のデータと学習工学に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。コメント欄でビジネス英語についてなんでもご質問ください。

 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

外資系企業 ITエンジニア Aさん(34歳)

新しいシステム開発のプロジェクトマネジャーを務めることになったのですが、プロジェクトメンバーが世界各国に分散し、主にビデオチャットでマネジメントしています。英会話には比較的、自信があったのですが、海外の一部のメンバーについては、英語のなまりが強く、聞き取れなくて困っています。緊急の課題として本当に悩んでいます。このような場合には、国や地域ごとのなまりを学習して対応した方がよいのでしょうか?

[回答]
 Aさん、ご苦労されていますね。近年、IT企業では、ITスキルと英語に優れた人材が多くいるインドで開発するような、オフショアのプロジェクトが増えています。結果、TORAIZ(トライズ)には同じような悩みを抱えている方がたくさんいらっしゃいます。

 また、Aさんと違って、英語にあまり自信がなく、現在学習中のビジネスパーソンが英語を使って仕事をする場合も、同様に「聞けない」という悩みを抱えています。このような方にも今から説明する回答が参考になると思います。

 結論から申し上げますと、Aさんの場合、特定の国や地域のなまりを学習する必要はないと思います。

 このことを理解するために重要な考え方が、1980年にカナダの言語学者、カナーリーとスウェインが提唱した「コミュニカティブ・コンピテンス」という概念です。カナーリーとスウェインは、社会言語学者ハイムズが言うところの「話し方のルール」、つまりターゲット言語の社会言語学的行動パターンを学ばなければならないという説をさらに発展させました。

 カナーリーとスウェインによれば、コミュニカティブ・コンピテンスは、次の4つの能力から形成されています。

  • ①文法能力:正しい発音・ボキャブラリー・文法に基づく構文力などの能力。狭い意味での英語力に当たるものと言えるでしょう。
  • ②談話能力:単なるセンテンスの羅列でなく、全体として1つの談話として一貫性、まとまりを持たせる能力。社会的に認識されている一種の「型」のようなものに沿って話すことができる能力です。例えば、「スピーチであれば最初に自己紹介をして、テーマについて話し、その後本題を話し、結びを言う」ことや、「意見を言うときは、結論を言った後に、理由を述べる」ことなどでしょう。
  • ③社会言語学能力:コミュニケーションする相手と場面・関係などにあった社会的ルールを守って言語を適切に使用する能力。例えば、敬意が伝わる表現などです。
  • ④方略的能力:限界のある第二言語でのコミュニケーションを前提として、コミュニケーションをゴールまで持っていく能力。例えば、話者が正しい用語を尋ねる(例:What is this? What called?)ことや、言語で伝えるのではなく、非言語表現で伝えること(例:賛意を表すために拍手する)などです。

続きを読む 2/2 コミュニケーションをゴールに持っていく責任は双方にある

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