この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約7000人の受講生のデータと教育設計学(Instructional Design)に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。
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それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。
家電メーカー勤務 Kさん(43歳)
当社ではグローバル化に伴い、グローバル人材育成研修を行っています。最近、私は研修の担当者になり、研修設計の参考にするためにこの連載を拝読しています。しかし、「第二言語習得理論」と「インストラクショナルデザイン」について、どのような違いがあるのか分かりません。それぞれの考え方と2つの違いについて教えてください。
[回答]
Kさん。いつも読んでくださってありがとうございます。
ご質問は、第二言語習得理論とインストラクショナルデザインの違いということですね。この2つは成り立ちが全く違うので、そもそもこの2つの違いを説明した論文などは私も読んだことがありません。そこで、それぞれの一般的な通説について述べた後、2つの違いについて私の考えをお話しさせてください。大きなテーマなので、3回にわたって回答いたします。
今回は、第二言語習得理論についてお話ししたいと思います。より正確にご説明するために、サンフランシスコ州立大学人文学部の南雅彦教授が書かれた『日本語教育研究:第二言語習得理論とアメリカの日本語教授法への影響』から一部引用させていただきます。
(※編集部注:『日本語教育研究:第二言語習得理論とアメリカの日本語教授法への影響』)
この論文は、アメリカの最新の第二言語習得理論を歴史的に概説しながら日本語教授法について考察した論文です。この論文での第二言語習得理論についての説明はアメリカにおける通説と言って差し支えないと思います。また、日本語に関する事例が挙げられているので、読者の皆さんにも分かりやすいと思います。ご一読ください。
まず、南教授の論文では、「第二言語(Second Language:L2 )」 は「 第一言語(First Language:L1)」との対比によって定義されています。生まれた地域や特定の環境の中で人が成長する過程で、初めに習得するのが第一言語であるのに対して、何らかの必要性があって習得する言語が第二言語とされています。
次に、「第二言語習得(Second Language Acquisition:SLA)研究は、学習者が母語以外の言語をどのように学ぶのか、その習得過程を研究・解明しようとする分野で、心理学・言語学・教育学などと関わり、さらに広義には外国語教授法も含まれる学際領域である」とされています。
そして、第二言語習得理論については、その発展の歴史をおおむね次のように分類し説明しています。
- 1.20世紀初頭以前:訳読式教授法(Translation Method)
- 2.20世紀初頭以降:直接教授法 (Direct Method)
- 3.1950年代:行動主義(Behaviorism)
- 4.1960年代:生得主義(Innatism/nativism)
- 5.1970年代:認知主義(認知学習理論 Cognitive-code Learning Theory)
- 6.1980年代とそれ以降:(認知)理論の発展・多様化、相互交渉(インタラクションInteraction)とコミュニケーション重視
では、それぞれについてまた詳しく見ていきましょう。

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