この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約7000人の受講生のデータと教育設計学(Instructional Design)に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。

 コメント欄でビジネス英語や学習法について何でもご質問ください。また、アンケートフォームでも質問を受け付けています(こちら→日経ビジネス「その英語学習法、間違ってます!」質問受付)。

 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

医師 Kさん(38歳)
 英語学習の参考にするため、連載をいつも拝読しています。私自身も英語で学会発表できるようになり、効果を実感しております。そこで、私の子供の英語学習についてご相談させてください。新型コロナウイルスなどの不安要素が多い時代でもある中、子供にも英語を話せるようになるための学びをさせたいです。この連載で紹介されているような学習方法は子供でも可能でしょうか。

[回答
 Kさん、連載を読んでいただきありがとうございます。

 さて、この連載でご紹介している「ゴールから逆算して、教材まで個別最適化するインストラクショナルデザイン・アプローチの英語学習方法」をお子さんにも適用可能か、ということですね。ポイントは、お子さんの年齢と受験のタイミングです。

 実は、TORAIZには親子で通われる方が意外なほど多くいらっしゃいます。ご両親のどちらかが受講されてプログラムにご満足いただき、お子さんも通われるようになったというケースが大半です。しかし、このようにご両親が希望される場合でも、お子さんの年齢と受験のタイミング次第ではお断りすることがあります。

 まず、ゼロから英語学習を始める10歳以上のお子さんの場合、話せるようになるまでには最低でも2000時間の学習時間が必要だと思います。これは、TORAIZの全受講生のVERSANT(ヴァーサント)スコアデータや、外交官などの専門職などを養成する米国務省機関の外務職員局(FSI:Foreign Service Institute)の言語習得に関する分析からも明らかになっています(厳密には成人と子供の差はありますが、次に述べるように学習時間だけで言えば2000時間以上かかる可能性もあります)。この2000時間をお子さんの人生の中でどのように確保するか、学校とどのように分担するかということがポイントになります。

 また、言語習得に最も適しているとされる10歳くらいまで(いわゆる臨界期)のお子さんの場合にも、2000時間以上の学習時間が必要だと思います。この年齢ぐらいまでのお子さんは、文法などのいわゆる「学習」に頼らなくても、言語を習得することが容易とされていますが、その分言語に触れる時間をより多く要するためです。このような学習戦略を取る場合には、バイリンガル幼稚園に入園し、インターナショナルスクールへの進学を検討すべきだと思います。

 こうした考え方に加え、インストラクショナルデザイン・アプローチによる英語学習は、この年齢のお子さんに「英語の勉強は嫌だ」というイメージを植え付けてしまう可能性もあります。そのためTORAIZでは、お子さんが小学4年生未満の場合には残念ながら入会をお断りしています。

 言うまでもなく、この年齢のお子さんにとって重要なことは、「英語は楽しい」「さまざまなルーツを持つ人とコミュニケーションできるのは楽しい」と感じられることです。ですから、ゴール志向というよりは「楽しく英語で歌う」「楽しく英語で遊ぶ」という経験をすることのほうがはるかに大事だと思います。

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