この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約7000人の受講生のデータと教育設計学(Instructional Design)に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。

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 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

IT企業勤務 Hさん(38歳)
 最近転職をしました。入社前に英語力は必要ないと聞いていましたが、実際は、会議や社内調整などで英語を使用する場面がかなりあります。英語の実力をつけるためには1年かかるということは連載を読んで分かっているのですが、今すぐなんとか英語を使う場面を乗り越えたいです。そのための即効性のあるライフハック的な工夫を教えてください。

[回答
 Hさん、確かに、「今すぐ役立つ英語のライフハック的な対策」が必要な状況ですね。Hさんと同じように、入社前に英語力は重要でないとの説明を受けていながら、入社すると実際は英語力がかなり必要だということに迫られて、TORAIZに駆け込んで来られる方がたくさんおられます。

 もちろん、正攻法としては1年間、ナチュラルな英語のシャドーイングを行うことに加えて、自分の実務で使う英語に最適化した教材でパターンプラクティスやレッスンを行うことが重要なのは、何度も申し上げてきた通りです。しかし、Hさんにはそれよりも今すぐ対応することが必要だと思います。

(1)リスニングのライフハック

 まず、リスニングでのライフハックです。音声認識サービスを活用します。

 お薦めは、アメリカのシリコンバレーを拠点とするオッターAIが開発した音声認識AIサービス「Otter(オッター)」です。英語の文字起こしに特化しており、音声を録音し、ほぼリアルタイムにテキスト化してくれます。起こしたテキストをクリックすると、そのテキストに対応した音声を再生してくれます。再生速度は0.5倍から3倍までの範囲で自由に調整することもできます。

 精度はかなり高く、実際にYouTubeに上がっているアメリカのバイデン大統領の演説は完璧に文字起こしができました(もっとも、歴代のアメリカ大統領のスピーチのスピードは緩やかで分かりやすい英語ではあるのですが)。

 では、Otterの具体的な活用方法です。当面の英語の会議においては、Otterアプリが起動したスマホをパソコンの画面に立てかけ、発言内容を文字に起こしながら会議をするのはどうでしょう。発言をほぼリアルタイムでテキスト化します。あまり発言する立場でない場合やオブザーバーとして同席する場合にはこれで十分だと思います。

 テキスト化は「ほぼ」リアルタイムですが、少しだけ間(ポーズ)が発生してしまいます。このため丁々発止のやり取りの場合は、その画面を見ながら対応することはやや難しいと言わざるを得ません。ですが、本当に困ったときは画面を確認してから回答するのが良いでしょう。全く回答できないよりもはるかにおすすめです。

 さて、当面はこのような活用方法で乗り切ることになりますが、Otterの良いところは、その会議をその後の学習教材にできる点です。音声とテキストがあるので、シャドーイングの教材として利用できます。これは最高に実践的で効果的なシャドーイング教材になります。また、テキストの中からキーワードを抽出してリスト化するのでボキャブラリーの強化にも役立つと思います。

 さらに言えば、まだ文字起こしされたスクリプトのない映画の中に、自分の学習ゴールに近い好みの作品があれば、Otterを使うことでシャドーイング教材として活用することができます。早口のつぶやきなどについては、多少の文字起こしのエラーがないとは言い切れませんが、非常に有益な教材となります。何しろスマホで音声を再生しながら対応する文字起こしのテキストをどこでも確認できるのですから。ぜひ活用していただきたいと思います。

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