インド人は発音を割り切る

 先に紹介した2冊の著者である本名先生によれば、インド人は英語の学習効率を上げコミュニケーション手段として使えるようにするために、発音については、一種の割り切りで矯正をしないことにしたとされています。

 この考え方は、「発音はビジネスパーソンとして最低限のコミュニケーションができるVERSANTスピーキングテストで47点を取ってから」というTORAIZの基本的な考え方と共通すると思います。発音を矯正し始めると、実用的に使えるようになるまで大変な時間がかかり挫折してしまう可能性が高いと考えるからです。

 このような考え方でインド英語は発音について完全に割り切っていますから、インドの学校の授業では、例えば、「th」の発音を正しく教えはするものの、実際の発音が「t」になっていても全く問題ないと考えられているようです。なぜなら「きちんとした教育を受けたインド人」でも「t」の発音だからだそうです。TORAIZでも「th」の発音は矯正しますから、インド英語の方がより徹底して割り切っていると言えるでしょう。

 また、「r」を「ル」と発音したり、「yesterday」の発音が「エスタディ」というような「/ye/」が「/e/」になったりするなど、いくつかの音の変化パターンもあります。

 では、このような音の変化について学ぶためにはどのような学習方法が良いのでしょうか?

 TORAIZの考え方では、できるだけリアルな音声が収録され、かつ表情や動作も見ることができる教材でシャドーイングをすることがベストだと思っています。つまり、インド英語でリアルな教材を探す必要があります。

インド映画は教材になる?

 リアルな教材といえば映画。何十人もの人々が画面一杯に映し出されてダンスしているような、インド映画らしい作品で学びたいところですが、実際はヒンディー語やタミル語などで作られるケースが圧倒的に多く、インド英語が話されていないのです。とはいうものの、日本でも動画サービスで見ることができるインド英語の映画もあります。インドの豪華リゾートホテルが舞台となっている『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』が一例です。しかし、字幕が英語でないのが惜しまれます。

 また、インド英語の教材として出されている本も何冊かありますが、中にはネイティブ話者の英語に近過ぎるものがあります。その点、先に紹介した『日本人のためのインド英語入門』は優れています。実際のインド英語話者の音声がダウンロードでき、本にはスクリプトと解説もあります。シャドーイング教材として活用していただくのには最適だと思います。

 TORAIZではシャドーイングの他に、フレーズ暗記によるパターンプラクティスを行います。インド英語の語彙やフレーズの強化のためにも『日本人のためのインド英語入門』に加えて、『新アジア英語辞典』を使うのが良いと思います。

 例えば、『新アジア英語辞典』では「分かりません」という意味のインド英語のフレーズとして”I am not getting you.”というフレーズが挙げられています。インド英語のフレーズを学ぶのに非常に良い例だと思います。インド英語では、そもそも”I am”を”I'm”と省略することは少ないようです。また、現在進行形を多用する面もあります。

 このような特徴的なインド英語の語彙とフレーズ暗記によるパターンプラクティスの教材として『新アジア英語辞典』は非常に有益だと思います。

 さて、TORAIZの英語学習の柱は、シャドーイングとパターンプラクティスとレッスンなのですが、実はインド英語に特化したプログラムとしてまだ実現できていないのがインド英語のネイティブ話者(英語のネイティブ話者ではありません!)によるレッスンです。

 しかし、可能であればインド英語のネイティブ話者とのレッスンは受けるべきだと思います。インド英語のネイティブ話者とのレッスンでは、単にインド英語についてだけでなく、彼らの文化や考え方、論理の立て方、ジェスチャーなどを学ぶことができるからです。日本では、一般的に「はい」の意思を伝えるために首を縦に振り、「いいえ」の意思を伝えるために首を横に振ります。ところが、インドでは、「はい」の意思を伝えるために横に首を振るのです。このようなことを学ぶためには、インド英語のネイティブ話者とのレッスンが大変役立つのです。

 オンライン英会話の各種サービスで、インド人の英語講師は比較的簡単に見つけることができます。

 Aさん。適切に取り組めば、インド英語の対応ができるようになるのにそれほど時間はかからないと思います。もちろん個人差はあると思いますが、3カ月から半年だと思います。頑張ってください。応援しています。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)
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