この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約6000人の受講生のデータと教育設計学(Instructional Design)に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。コメント欄でビジネス英語について何でもご質問ください。

 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

メーカー勤務 Mさん(29歳)
 4月に、希望していた英語を使う部署に異動となりました。より一層英語力に磨きをかけるつもりです。しかし、可能な限り独学でお金をかけずに英語力を付けたいと思います。独学で安価に英語を学ぶ場合の留意点があれば教えてください。また、独学ではやはり難しいと思ったときのスクール選びについても留意すべき点があれば教えてください。

[回答]
 Mさん、まずは希望部署への異動おめでとうございます。Mさんは、独学でさらに英語力を付けたいということですね。英語のコーチングスクールの経営者として言ってしまっていいのかは分かりませんが、独学で安価に英語力を身に付けることはできます。究極的に言えば、大人の英語学習で大事なことは1つだけです。

 それは自分の英語学習のゴールを明確にすることです。これは、この連載でも何度も触れている通り、社会人が何かを学ぶ際に最も重要なことです。社会人経験が増すほど、単純に暗記するのではなく、自分自身にとっての重要性や過去の知識や経験とのひも付けが新しく何かを学ぶ際にかぎ(フック)となるからです。

 ビジネスパーソンの方は、自分の仕事に関係がある言葉であれば、外来語であってもすぐに覚えることができるはずです。例えば、学生時代にはサプライチェーンという単語を覚えていなかったのに、会社に入ってから努力することなく自然と覚えたという人も多いのではないでしょうか。

 これらは、効率的な学習・研修を追求するインストラクショナルデザインの分野で、「メリルの第一原理」としてまとめられています。「メリルの第一原理」は、インストラクショナルデザインの世界的権威であるユタ州立大学のM・デイビッド・メリル教授が過去のインストラクショナルデザインの研究を集大成し提唱したものです。

 「メリルの第一原理」によると、優れた学習・研修デザインは「課題志向」「活性化」「例示」「統合」「応用」という5つの要素を備えるべきだとされています。

 「課題志向」は学ぶコンテンツを学習者が実際に直面している、または直面する可能性の高い課題の解決に役立つものから逆算して設定すること。「活性化」は過去の自分自身の知識や経験を活用し、学びとひも付けること。「例示」は学習したことが活用されている具体的な事例を示すこと。「応用」は学んだことを使ってみてフィードバックを受けながらさらに理解・活用していくこと。そして「統合」は学んだことを実務で使い、深く広く定着させていくことです。

 「メリルの第一原理」の特徴は、学習と実務が一体のものとしてサイクルになっている点です。学ぶコンテンツ自体が実務の課題から定義されていますし、学ぶプロセスでも実務とひも付けながら事例ベースで学びます。また、学習した後も学習したことを実務で使いながら身に付けていくことが強調されています。つまり、「メリルの第一原理」によれば、効率的に学びたいなら、学習するコンテンツは自分自身の実務から離れて存在してはいけないものなのです。

 しかし、学校教育でも英会話スクールでもそこまで細かく学習コンテンツを細分化することはできません。マンツーマンの英会話スクールでもスクール指定の教材を使います。そのため、効果を感じることができずに長続きしないのです。

 それに対して独学であれば自分自身の実務にあった教材を選ぶことが可能です。これが独学の素晴らしい点です。例えば、Amazonで「英会話」と入力して検索すると、2万以上の検索結果が表示されます。さらに細かく「英会話 ファシリテーション」で検索すると結果は17件、「英会話 医師」では86件、「英会話 品質管理」では147件出てきます(ただし、本当に品質管理に関係がある本は2冊だけでした)。

 このように、自分のゴールに近い教材はすでに存在しています。これを使えばよいのです。おそらくMさんだけでなく、多くのビジネスパーソンは中学英語レベルの文法と単語はマスターしていると思います。であれば文法や単語を追加で覚える必要はないと思います。実務で必要な文法や単語は実務に即した教材であればいや応なく出てくるので、効率的に学び活用できるようになるはずです。

 このような教材を使ってシャドーイングやフレーズ暗記をすればおのずと継続でき結果も出てきます。またMさんのように英語を使う環境があれば英会話教室に行く必要もないかもしれません。

 ただ、Mさんのようにアウトプットの機会がある人ではなく、独学ではアウトプットが足りないと思う場合は、やはり英会話をする必要があります。なぜならば、「メリルの第一原理」で学んだように、得た知識を具体的に使ってフィードバックを受けることも重要だからです。ぜひ、自分が選んだ教材を持ち込むことができて、その教材を使ってレッスンをしてくれる英会話教室やオンラインの講師を探してみてください。

次ページ 「なぜなぜ分析」ができるスクールを探す