英語力は、コミュニケーション力
3番目に重要なことは、「英語力は、コミュニケーション力」ということです。実は、文法や単語はほぼマスターしていてTOEICのスコアも900点以上あるけれど、「英語でのコミュニケーションに自信が持てない」と言ってTORAIZの受講を開始する人もたくさんいます。
ここで、話をシンプルにするために、いったん英語ではなく日本語に話を置き換えて思考実験してみましょう。読者の皆さんには、中学や高校時代を思い出してほしいのですが、国語の試験で満点しか取ったことがないという人はいないと思います。しっかり勉強して漢字の部分などは完璧にできても、読解で満点を取るのは難しいものです。
例えば、「下線部(1)で佐太郎は、なぜ山に向かって走り出したのでしょう。ア~オのうちふさわしいものを選びなさい」というような問題は、意外と正解できないものです。変ですよね。正解はア~オの5つのどれかなのですから。
国語ですから、文法や単語については、十分に理解しているはずです。しかし、正解を選べない。それは、正解にたどり着くためには、単純に文章の意味がわかるだけでなく、主人公や他の登場人物の気持ちや過去の知識や経験、他の登場人物との関係など前後の文脈を読み解いていくことが必要だからです。これは、一種の共感力や推察力といった力で、単純な文法や単語力とは全く異なります。
これと同じことが英語での会話にも当てはまるのです。言い換えれば、文法と英語力が高くても英語でのコミュニケーションには十分ではありません。では、何が必要かと問われれば、英語をコミュニケーションで使いこなすためには、「コミュニケーション・ストラテジー」が必要なのです。コミュニケーション・ストラテジーとは、コミュニケーションをうまく進めていき、コミュニケーションのゴールを達成するための作戦です。
例えば、米国の会社と日本の会社でお互いに出資してジョイントベンチャーを設立し、人事制度をつくるためのミーティングをするとします。おそらく、日本サイドの担当者が、英語力が非常に高くても会話には苦労するはずです。それは、雇用慣行や法制度、さらには個人個人の仕事やワークライフバランスについての考え方など文化の面まで、日米で大きな差があるからです。したがって、新しい人事制度というゴールに行くまでは、お互いに何が目的で、何が問題かなどを聞きながら手探りで議論していくことになります。
そのために英語で、互いに「自分の言っていることは伝わっているか?」を質問して確認し、伝わっていない場合には、言い換えをして再度、説明するなどのコミュニケーションを積み重ねるための意図的な作戦が必要なのです。
また、理解度を確認していくため、ホワイトボードに図示するなどの言語以外の方法を活用することも必要になってきます。これがコミュニケーション・ストラテジーです。
では、コミュニケーション・ストラテジーはどうやったら身に付くのでしょうか。それには、一定以上のビジネス経験があるネイティブの英語話者との英会話レッスンが必要だと私は考えます。
ビジネスについて議論できるだけの、ビジネスパーソンとしてのベースがないと、そもそも互いに質問や確認をし合うコミュニケーション・ストラテジーを使ってのレッスンができないからです。英語学習のゴールが社会人としてビジネスで英語を使うということであれば、「英語力は、コミュニケーション力」であることを前提にして、ビジネス経験のあるネイティブと間でアウトプットをする英会話レッスンが極めて大事なのです。
逆に言えば、中高生が文法と単語のアウトプットの学習として英会話を学ぶという場合は、ネイティブではなくビジネス経験もない英語講師でも問題ないとも言えるでしょう。しかし、社会人の場合、それでは時間がかかり過ぎますし実戦では役立ちません。
今回は英語学習の3つのポイントをお話ししました。次回以降は、この3つのポイントを踏まえた上で具体的にどのように学習したらよいかについてお話ししたいと思います。
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