TOEICは700点でいい

 まず、私たちは条件に沿ってスクリーニングした外資系ビジネスパーソンであっても自らの英語力に満足しているかを調べる必要があると考えました。外資系ビジネスパーソンは英語力だけでなく、総合的に評価されるため、純粋な英語力について十分な満足度があるか分からないと考えたからです。その結果は、満足している人は、48.6%と半数をわずかですが切るものでした。つまり、外資系企業ビジネスパーソンであっても半分以上の人は、まだまだ自分自身の英語力に満足していないということです。

 次に、私たちは、そもそも外資系ビジネスパーソンには英語学習に関して特別な環境があり、その結果、英語を習得することが容易だったのではないかという仮説を持っていました。そこで、「両親のどちらか、もしくは両方がネイティブの英語話者ですか?」という質問をしました。結果は、「Yes」と答えた人が22.1%とかなりの割合を占めました。

 また、「生まれてから現在まで合計1年以上の海外での居住又は留学経験がありますか?」という質問に対しては、6割近い人が「Yes」と答えています。

 つまり、両親のどちらも英語話者ではなく、海外での居住も留学経験もない人は、少数派ということになります。このことは、日本国内だけで一般的な英語教育を受けてきたビジネスパーソンにとってはかなりショッキングな内容ということができるかもしれません。

 では、「外資系ビジネスパーソン」の英語力はどれほどなのか。日本国内でビジネスパーソンの英語力の目安として最も多く使われているTOEIC Listening & Reading Testのスコアで深掘りをしてみたいと思います。

 まず、TOEIC Listening & Reading Testのスコアで700点未満の人が合計で3割弱いて、これらの人に700点以上800点未満の人を加えると全体の半分弱に達します。これは、外資系企業だからスコアが800点以上、900点以上の高得点者ばかりということではないことを意味しています。

 現在、日本では、TOEIC Listening & Reading Testが多くの企業で入社や昇進・昇格のための基準として使われていることもあり、読者の皆さんもスコアをお持ちかもしれません。中には、「グローバルに活躍するためには、TOEIC のスコアはどれだけ取ればよいのか」「TOEIC を極めれば英語を話せるようになるのか」などと疑問を持っている方もいるでしょう。

 そこで、さらにTOEIC Listening & Reading Testのスコアと満足度のクロス集計をしてみることにします。すると面白いことが分かってきます。

 この分析から言えることの1つは、TOEIC Listening & Reading Testのゴールの目安は700点台だろうということです。600点以上700点未満では、自分の英語力について満足している人は、3分の1程度しかいないのに対して、700点以上になると、満足している人の割合が6割近くまで上昇することから分かります。

[画像のクリックで拡大表示]

 また、さらに高得点の層に注目してみると、実は950点未満までは自身の英語力に満足している人は、全体の6割前後と大きくは変わりません。言い換えれば、TOEIC Listening & Reading Testで700点を確保することができれば英語を使った口頭でのコミュニケーションをする素地は十分であり、それ以上のスコアを追求しても、英語を使った口頭でのコミュニケーションへの貢献はそれほど高くないということがいえると考えられます。

 つまりTOEIC Listening & Reading Testのような「聞く・読む」からなるインプット中心の学習では、外資系企業で通用する口頭での英語のコミュニケーション能力を身に付けるまでに相当な学習時間が必要となってしまう、もしくは非常に困難ということがいえると思います。

 実際、TOEIC Listening & Reading Testで950点以上を達成する人は極めて限られており、TOEIC公式サイトで提供されている「くらべるスコア」によればTOEIC Listening & Reading Testの受験者の1%未満しかいません。むしろ、TOEICのスコアがそこまで高くなくとも外資系企業における自分の英語力に満足している人が多数いることに注目すべきだと思います。

次ページ 外資系企業で働くために必要な学習期間はどれぐらいか