2月4日に北京冬季五輪が開幕し、熱戦が繰り広げられています。その中で気になる出来事があったので、今回は読者からの質問にお答えする形式をお休みして、この問題について取り上げたいと思います。

 取り上げるのは、ノルディックスキー・ジャンプ混合団体で高梨沙羅選手ら5人が失格になった問題です。この問題は世界で大きな議論を呼んでいるだけでなく、日本の企業やスポーツチームが世界で戦う際によくあるパターンと言えるからです。

ノルディックスキー・ジャンプ混合団体で高梨沙羅選手ら5人がスーツの規定違反で失格になった(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
ノルディックスキー・ジャンプ混合団体で高梨沙羅選手ら5人がスーツの規定違反で失格になった(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 まず、この問題の事実関係をおさらいしておきましょう。

 2月7日に行われたジャンプ混合団体で高梨選手は1回目のジャンプ後に抜き打ち検査を受け、スーツの太もも部分が規定より2センチ大きいとして失格となりました。またドイツのカタリナ・アルトハウス選手、ノルウェーのシリエ・オプセト選手、アンナオディネ・ストレム選手、オーストリアのダニエラ・イラシュコ・ストルツ選手も同じくスーツの規定違反で失格となりました。

 この失格を受けて高梨選手は会場でカメラに向かって30秒近く、深々と頭を下げ、2月8日には、自身の公式インスタグラムを更新し、「この度は本当に申し訳ありませんでした」と謝罪しました。

 また、女子ジャンプの横川朝治ヘッドコーチは報道陣との一問一答で次のように話しています。

 「太ももの場所が2センチ大きかった。選手は僕らの用意したスーツを着てそのまま飛ぶので。僕らスタッフのチェックミスです」「ルール違反はルール違反ですので。それは仕方のないことですが、それだけ世界中がもう、ぎりぎり狙っているのは事実ですし。そうしないと、それだけ勝てない世界になってきている」(引用元

 私は横川氏が「ルール違反はルール違反ですので。それは仕方のない」と話し、その理由として「僕らスタッフのチェックミスです」と述べた点が気になりました。もちろんこの発言にはチームの責任であることを明確にして、高梨選手の負担を軽くする考えもあるでしょう。ただ、日本の選手が世界で戦っていくためのコミュニケーションとしては違和感があります。

 「ルール違反はルール違反」と語った日本チームに対し、同様に失格となった他国の選手や関係者は、失格の判定に反論をしています。海外の報道を見てみましょう。

ドイツのアルトハウス選手
「11年間のスキージャンプ人生で何度もチェックを受けてきたが、一度も失格にならなかった」
「国際スキー連盟は、今日の女子スキージャンプを破壊した」
引用元

ドイツのシュテファン・ホルンガッハー男子代表監督
「オリンピックになると、いきなり違うテストを始めたり、それ以上のことをしたりする」(引用元
「まったくクレイジーだ。3人のプロフェッショナルな女子選手が失格になった。3人は、いつもワールドカップで優勝している。何の説明もなかった」(引用元

オーストリアのマリオ・シュテッカー・スポーツディレクター
「スキージャンプのイメージに計り知れないダメージがある」(引用元

ノルウェーのシリエ・オプセト選手
「なんと言ったらいいか分からない。彼らは全く違う方法で、新しい手順で計測した」(引用元

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