この連載では、英語コーチング・プログラム「TORAIZ(トライズ)」の約6000人の受講生のデータと学習工学に基づき、最小の努力によって最短で英語の学習目標を達成するためのノウハウを受講生や読者の皆様からの質問に答える形でお伝えしていきます。コメント欄でビジネス英語について何でもご質問ください。

 それでは今回も質問にお答えしていきたいと思います。

[今回の質問]

メーカー勤務 Aさん(62歳)
そろそろシニアといわれる年齢になり、今後の人生について考えるうちに、英語を学ぶことが選択肢を広げるきっかけになるのではないかと思い始めています。シニアが英語学習をする意味はあるのか、教えてください。

[回答]
 先日、私が講演したキャリアと英語学習についてのセミナーで事前に質問を受け付けたところ、多くのシニアの方から同じような質問を受けました。人生100年時代になり、シニアのキャリア形成の1つの手段として英語学習があると感じました。

 質問にお答えする前に、まず前提としてお伝えしたいことがあります。それは「英語の学習に年齢はほぼ関係ない」ということです。厳密に言えば、20代から60代までの時間当たりの学習効率はほとんど変わらないということになります。70代になると少し下がりますが、それは70代の学習時間が長いことによる影響で、結果としてはほとんど変わりません。ですから70代までは何歳から英語学習を始めても遅過ぎるということはないと思います(「52歳から本格的に英語学習、若い人と比べて習得は難しい?」もご参照ください)。

 シニアの英語学習には3つのパターンがあります。まず、次のキャリアとして英語を使う仕事に就くために英語を学習するパターンです。TORAIZではこのパターンの方が最も多いです。英語はまだ「英語屋」が習熟すればいいとされていた時代に、日本の大企業や官公庁でしかるべきポジションに就いていた方々です。このような方は豊富なビジネス経験と人脈をお持ちなので、英語が使えると次のキャリアの選択の幅が広がり、転職した後もグローバルに活躍できるようになります。

 例えば、グローバル展開している東証1部上場のメーカーの監査役や外資系ファンドの顧問に就いたケースもあります。現在では日本のメーカーであっても、海外での生産比率や販売比率が過半を超えるような状況も珍しくないですから、監査役にも英語力が求められているということでしょう。また、外資系のファンドにとっても英語力があり日本社会での人脈が豊富な人材には興味があるのです。

 2つ目は、英語を使ってビジネスではなく社会貢献やボランティアをしたいというようなパターンです。例えば、国際協力機構(JICA)には海外協力隊のシニア案件として40歳から69歳までの人を対象に、経験を生かして活躍する制度があります。

 また、自分の出身地で海外からきた人のガイドをしたいという人もいます。こうしたボランティアを地方自治体が募集している場合もありますし、日本全国を対象に観光ガイドを募集しているボランティア団体もたくさんあります。コロナ禍の中ですが、今から準備をしておくことを考えてもよいと思います。

 また、このパターンの変形として老後に海外に移住したいというものもあります。移住後の生活のために不自由なく英語が話せるようになりたいというTORAIZの受講生が増えてきています。

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