意見を外国語で伝える能力が求められる

 1つ目のポイントは、「日本と海外のチーム運営上の文化の違い」です。TORAIZを受講したプロサッカー選手には、守田選手以外にも中山雄太選手(イングランド・ハダースフィールド所属)や菅原由勢選手(オランダ・AZアルクマール所属)など、将来の日本代表を担う可能性のあるトップレベルの選手がいます。彼らが共通して話すのは、「ミーティングで監督と選手の関係がフラットで、監督に意見を求められることがあり、驚いた」ということです。意見を求められたときにきちんと自分の言葉で伝えられることも、選手として重要なスキルのようです。

 2つ目のポイントは、「スポーツとしてのサッカーそのものが変化している」ということです。10年以上前から徐々に変わってきてはいるのですが、ピッチ上の基本単位が3人、またはそれ以上の単位で連携するようになっています。

 例えば、敵のプレーヤーにボールを取られた場合、直後に複数の選手で一斉に連携して、プレッシャーをかけてボールを奪い、その勢いでショートカウンターをかけて得点を狙う「ゲーゲンプレス」という戦術があります。

 ゲーゲンプレスを駆使するには、選手自身の戦術理解と、それに基づく相互信頼が必要です。どちらかが足りないと、せっかく敵陣にスペースが空いても、それを活用できる選手に適切なタイミングでパスを出すことが難しくなります。こうした観点では、現代のサッカーはよりチームスポーツとしての側面が強まってきているといえるでしょう。

 こうしたことを考えると、サッカー選手にとって語学力、さらにコミュニケーション能力は不可欠だと考えられます。特にサッカー選手が学ぶべき語学については、私はスタートダッシュが大事だと思います。

海外移籍を検討している選手がまずすべき学習とは

 もし海外移籍が視野に入ってきたら、可能な限り早く語学の学習を始めることをお勧めします。移籍チームがすでに決まっていたら、その国の言語を学び始めるのもいいでしょう。特にラテン系の国では英語よりその国の言語を話せるほうが、信頼や人望を獲得しやすいともいわれます。

 しかし、移籍チームがどの国や地域になるか、直前まで分からない場合も多いものです。それならまずは、英語を学習しましょう。なぜならば、どの国のチームも、英語専任の通訳者を抱えている場合が多く、選手も共通言語として英語を話すことが多いからです。また、選手自身のキャリアパスとしてイングランドのプレミアリーグをゴールに考えているのであれば、長期的に英語を学習しておいて損はないでしょう。

 もっとも大切なポイントは、自己紹介と自分に関して想定される質問について、事前にその国の言語もしくは英語で話せるようにしておくことです。現在は、チームのSNS(交流サイト)などでも入団会見が配信されることがあります。その際にやはり、自分の言葉で自己紹介や抱負について語ることができるかどうかは、チーム内外での印象を左右する要因の一つになります。

 加えて、「語学を学ぶ」というよりは「サッカーをするためにコミュニケーションを学ぶ」という意識を持つほうが重要視される傾向があります。ゴールに合わせて適切な学習をするために、個別最適化を可能にするスクールや語学教師から学ぶことが効果的でしょう。

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