いつもは英語コーチングスクール「TORAIZ」の受講生などからの質問に回答する形で英語学習のノウハウについてお伝えしている本連載ですが、今回は特別編として公益財団法人日本サッカー協会(JFA)専務理事の須原清貴氏とのインタビューをお届けしたいと思います。

 TORAIZは現在、サッカー選手などアスリートの英語学習もサポートしており、サッカー日本代表の中山雄太選手なども受講しています。須原氏は外資系企業トップを歴任してきたビジネスパーソンで、現在は日本のサッカーのグローバル化に尽力しています。須原氏に英語と日本サッカーの関係や英語学習のノウハウについて聞きました。

<span class="fontBold">須原 清貴(すはら・きよたか)氏</span><br />公益財団法人日本サッカー協会専務理事。ボストンコンサルティンググループ東京事務所コンサルタント、CFOカレッジ代表取締役社長、GABA取締役副社長兼最高執行責任者(COO)、キンコーズ・ジャパン代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)、ベネッセホールディングス国内英語カンパニー長、ベルリッツ・ジャパン代表取締役社長、ドミノ・ピザ ジャパン代表取締役兼COOを経て、2018年3月より現職(写真:的野 弘路、以下同)
須原 清貴(すはら・きよたか)氏
公益財団法人日本サッカー協会専務理事。ボストンコンサルティンググループ東京事務所コンサルタント、CFOカレッジ代表取締役社長、GABA取締役副社長兼最高執行責任者(COO)、キンコーズ・ジャパン代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)、ベネッセホールディングス国内英語カンパニー長、ベルリッツ・ジャパン代表取締役社長、ドミノ・ピザ ジャパン代表取締役兼COOを経て、2018年3月より現職(写真:的野 弘路、以下同)

三木雄信(以下、三木):私どもが運営するTORAIZでは、現在欧州のクラブで活躍している中山雄太選手や菅原由勢選手などにも英語コーチングを提供しています。こうした選手たちに話を聞くと、競技に直結するフィジカルやスキルだけでなく英語によるコミュニケーションが以前よりも重要になっていると感じます。

須原清貴氏(以下、須原氏):その通りです。まず、サッカーそのものがすごい速さで進化しています。プレーのスピードもそうですし、システムや戦術もそうです。システムや戦術に関して言えば、90分間このスタイルで行くんだというものではなくなっていて、その試合の展開や相手が自分たちの予測を超えてきたときへの対応などで目まぐるしく変わります。もちろん誰かが負傷して、それに対してどういう補充があるか、システムがどう変わるかといったことも起こります。

 これらをすべて通訳を通してやり取りするのには限界があります。こうしたことが起こるたびに発生する監督とのコミュニケーションや選手同士のコミュニケーションの内容をしっかりと理解できるかどうかが非常に大切なことになります。仮にフランスのリーグに行ったとしても、やはり英語が一番の共通言語になります。

 ですから、世界で一流として活躍していこうという場合、英語はエントリーチケットのようなものだと思います。もちろん英語ができれば選手として活躍できるというものではありません。しかし、英語ができなければ入り口に立つのも難しくなりかねません。

三木:試合にしっかりと出るためには、体調を監督やコーチに英語でしっかり伝えられることも重要だと感じます。

須原:なるほど。まずプロとしてきちんとコンディションが整っていることが一番重要なポイントですが、鍵となる人物、例えば監督やコーチはもちろん、フィットネストレーナーなどに正確に伝えることができれば、フィットネストレーナーから「ではこんなことをやってみよう」といったことが引き出せるかもしれません。逆に自分の感覚や症状が正確に伝えられないと、フィットネストレーナーからの正しい指導を受けられないといったこともあり得るでしょう。

 そのあたりをサポートする意味も含めて、JFAはドイツのデュッセルドルフにオフィスを構えました。まだ小さなオフィスですが、メンテナンスのスペースは用意してあります。例えば日本代表が欧州に遠征した際には、我々のフィットネストレーナーが対応できます。ただ、常時フィットネストレーナーを置くところまではいっていないので、そうなると所属クラブのトレーナーとどれくらい話をできるのかが重要になってきます。

三木:そうなんですね。であれば体調を伝えられるフレーズ集などがあってもよさそうです。

須原:面白いですね。90分間のピッチの中でのコミュニケーションや練習でのコミュニケーションについては、選手たちの間でもある程度確立したものがありますし、頻繁に行われているので近くにいる英国人やドイツ人がどんなことを言っているかを聞いて、学ぶこともできます。コンディショニングについては確かにもう少し準備をしてもいいかもしれません。

三木:選手の方々をサポートしていて思うのは、皆さん非常に忙しい中で、短期間で集中して英語を学習し、話せるようになっていることです。上達の速度は一流のビジネスパーソンと同等かそれ以上です。

須原氏:やはり日本代表クラスの選手は、やり切る力を持っています。サッカーだけでなくそれ以外のところでもそうした力があるからこそ日本代表になれるわけですよね。

 また、これはサッカーに限らずどのアスリートでもそうだと思いますが、極めて合目的的に動きます。シーズンを通してどのようにコンディションを整えるべきなのか、あるいはどの大会、どのゲームから逆算していつまでにどのようなコンディションにすべきなのか、それに対して日ごろからどういったことをやるべきなのか、あるいはやってはいけないのかといったことを意識しています。

 例えば、週末の試合が終わった翌日は完全には休まず、アクティブレストといって少し動きます。完全に休んでしまうと余計に疲れがたまってしまうからです。その翌日に完全に休養すると、次の週末の試合まで残りは3日ほどですが、その間に一度ピークを入れます。そこでものすごく負荷の高いトレーニングをして、もう一度落として試合というのが通常のサイクルです。こうしたサイクルをルーティン化して実行できるだけの技術やスキル、知識、そしてマインドセットを一流のアスリートは持っています。

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