一方、成功したチームの場合、当初の計画で想定していなかった問題が生じた際、想定自体に目を向け、自分たちが(場合によっては暗黙的に)置いてきた前提や仮説の存在と、その検証に意識を向けた。これはPDCAを不確実性への対処のために活用していたといえる。

 ここから浮かび上がるのはリーダーの在り方だ。全く予想していなかった問題に直面した際、「すぐに何とかしろ」とあおる会社やチームは実は少なくない。しかし、それだけでは不十分で、むしろリーダーは問題に対処しつつ焦る気持ちを抑え、「自分たちの置いてきた前提の何が間違っていたのか」と考える冷静さを取り戻せるように社員をサポートすることが求められる。

 例えば、テレワークを導入してみたものの、あまり良い結果とはならなかった場合、すぐにテレワークを廃止していないだろうか。「当初テレワークに抱いていた期待や予測の何が間違っていた。では、なぜそのような間違いをしてしまったのか」といった検証をすることなくテレワークをやめる=臭いモノに蓋をするケースだ。一見すると俊敏な対応力のある会社に見えるかもしれないが、実際には「学び」を通してレジリエンスを高める機会をみすみす逃している。自分たちが置いてきた前提や仮説を検証することはそれだけ大切だ。

Check→Actionの課題への対処法:
計画で想定していなかった問題に直面した場合、その問題の対処に全力を投入するのでなく、自分達が置いてきた前提や仮説を検証することも同時に求められる

Do→Checkの課題:「違和感」や「直観」を軽視せず、現場感と全体感のバランスをとる

 PDCAサイクルを導入・運用する場合、Doのステップの「長さ」=どれくらい時間をかけるか、は事前に決めることが多い。具体的には1年間、1カ月間といったDoの期間を経て、年度末や月末に、自分たちの状況をCheckするという形になっていることが多いだろう。しかし、レジリエントなチームをつくるためには、「Do→Check」のタイミングを社員が自分で判断しなくてはならないはずだ。というのもたとえDoの最中であっても、「目の前で状況が悪化しつつある」場合には、社員が自発的に認識できるチームでなければ対応できないからだ。設定された期間が過ぎるのを待ってから検証と分析のステップに入っていては、「時すでに遅し」となりかねない。

 米国クリーブランドのケース・ウエスタン・リザーブ大学のジョン・ポール・スティーブンスは合唱団についての21年の論文において、「合唱団は、合唱中に歌を止めることなくどのように歌唱上の問題に気づき、いかに対処しているのか」を実証的に調査した。この研究成果は自発的な「Do→Check」を行うチームをつくる上でのポイントを示す。

 合唱団のメンバーは、合唱中に「一体感」や「バラバラな感覚」など「美的経験」を得ているという。このため、合唱中に「バラバラな感覚」を得たメンバーは、恥ずかしさや、フラストレーション、不安といったネガティブな感情を抱く。そして、ネガティブな感情がトリガーとなって、周りと自分に意識が向くようになる。

 もう少し詳しく見ると、メンバーが合唱で「バラバラな感覚」を得た場合、一体感を取り戻すには(1)「自分の歌声」や「周りの歌声」といった身の回りの具体的な要素と、(2)「指揮者」や「楽譜」といった全体のパフォーマンスを示す要素の両方に意識を向ける必要がある。にもかかわらず、どちらかに過度にフォーカスすると「バラバラな感覚」から逃れられなくなる。例えば「楽譜」や「指揮者」に集中し過ぎて「自分の歌声」に対する意識が下がるケースや「自分の歌声」や「周りの歌声」にフォーカスし過ぎて全体の流れを無視するケースがある。

合唱団は歌唱上の問題に気づき、いかに対処しているのか
合唱団は歌唱上の問題に気づき、いかに対処しているのか
(出所)スティーブンスの研究を参考に研究を基に宍戸准教授が作成
[画像のクリックで拡大表示]

 合唱についてのスティーブンスらの研究は、ビジネスの世界にも重要なヒントを与えてくれる。

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