「現場の問題を解決するために、経営学の知見を参考にしたい」と思った際、どうしたらいいだろうか。ここでは「グーグルスカラー」を用いて、自社に役立つ海外の最新学術論文を探す2つのポイントを説明しよう。世界のトップ・ジャーナルに掲載されている論文は英語で書かれているため、前提として基本的な英語力が必要になる。また、学術論文の探索には多様な方法があるため、ここに挙げるのは1つの例にすぎない。

役立つ論文をどう探したらいいいだろうか(画像=PIXTA)
役立つ論文をどう探したらいいいだろうか(画像=PIXTA)

検索する言葉を決める

 私のこれまでの経験では、実際に検索を行う前のこのステップが、最も難しく、そして最も重要なステップだ。ここを間違えると、現場の問題とはかい離した見当はずれの学術論文を読む羽目になる。そのことに途中で気づけば時間が無駄になるだけですむが、気づかずに「この論文で……ということが実証されているから、うちの職場でも……を実践すべきだ」と結論付けてしまうと、職場に対して破壊的な影響を与えてしまう。

 まず検討すべきポイントは、「ビジネスの現場で使われている言葉と、アカデミックなコンセプトとのひもづけ」だ。例えば「社員の活気がない」という問題に取り組みたいとしよう。「活気がない」という言葉を、そのまま英語に翻訳すると”not lively”や”low energy”といった単語が出てくる。しかし、これらはアカデミックなコンセプトではないため、そのままグーグルスカラーで検索しても目当ての論文にはなかなかたどり着けないだろう。

 問われているのは、英語力ではなく「コンセプト化する力」だ。ここで、「ビジネスの現場の言葉」をいきなり「アカデミックなコンセプト」へと抽象化したくなるかもしれない。勉強熱心なビジネスパーソンならば、「活気」という言葉を「エンゲージメント(engagement)」というコンセプトで置き換えるだろう。

 しかし実際には、「ビジネスの言葉」は一度具体化してから抽象化する方が好ましいケースが多い。「活気がない」という言葉から、どのような職場のイメージを持つだろうか。ある職場では「社員が会議で発言しない」というイメージかもしれないし、別の職場では「言われたことしかせず、自らすすんで新しいことに挑戦しない」というイメージかもしれない。さらには、「テレワークが進んで職場に人がいない」ということから「活気のなさ」を感じているのかもしれない。

 具体的なイメージが得られたら、それを起点として「コンセプト化」していく。例えば、「会議で発言する」というイメージから「心理的安全(psychological safety)」「コンフリクト(conflict)」「発言(voice)」などのコンセプトが結びつく。「自らすすんで挑戦する」ならば「ジョブ・クラフティング(job crafting)」「促進焦点(promotion focus)」「プロアクティブ・パーソナリティー(proactive personality)」などがある。

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