統計分析の手法が洗練される中で、定量データによって裏打ちされた経営学の理論に高い信頼を置く人は多いだろう。しかし、実証された理論をそのまま実践しても大きな価値が生まれるとは限らない。職場における社員間の対立(コンフリクト)の研究から、その理由を考えよう。

なぜ理論通りでも成果を上げられないことがあるのだろうか(写真=PIXTA)
なぜ理論通りでも成果を上げられないことがあるのだろうか(写真=PIXTA)

 コンフリクトには大きく2つの考え方がある。「コンフリクトは職場の安定を損ない、バラバラにするから問題」という主張と、「新しいことは対立・衝突から生まれる以上、コンフリクトを抑えることは問題だ」という主張だ。研究者たちは「分ける=異なる種類のコンフリクトを区別する」と「測る=コンフリクトの影響を測定する」という2つのアプローチから研究を進めてきた。

 「分ける」について、研究者はコンフリクトを「タスク・コンフリクト」と「リレーションシップ・コンフリクト」の2種類に区別する。このうち、タスク・コンフリクトとは、仕事に関する課題について意見やアイデアがぶつかることを指す。例えば、製品の企画会議において、顧客に訴求するデザインについてのアイデアが衝突するケースなどが含まれる。一方、リレーションシップ・コンフリクトとは、仕事とは関係のないパーソナルな問題についていがみ合うことを指す。「あいつは気に食わない」「営業部門は性格が悪すぎる!」といった対立が、ここに含まれる。

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