「顧客をファンにする」上で、スタッフの「笑顔」や「あいさつ」は欠かせない、と思いがちだ。しかし、最新研究では、顧客によっては「笑顔がファンづくりにつながらない」ことが明らかになっている。一体どうしたら顧客の心をひきつけられるのだろうか。

スタッフの「笑顔」が顧客をファンにする上でプラスの効果をもたらすとは限らない。写真はイメージ(写真:Aleksrybalko/PIXTA)
スタッフの「笑顔」が顧客をファンにする上でプラスの効果をもたらすとは限らない。写真はイメージ(写真:Aleksrybalko/PIXTA)

 「顧客をファンにする」のは、マーケティングの永遠のテーマの1つだ。ファンになってくれたら、安く商品やサービスを提供する競合が現れたとしても、引き続き自社の商品やサービス、ブランド、会社を応援してくれる。そんな顧客を増やすことは、市場や国境を超えて競合企業が出現する現代の企業環境において、重要な課題となっている。

 このテーマを深める上でまず知るべきなのは、顧客生涯価値(Life Time Value=LTV)という考え方だ。LTVは、顧客1人が取引開始から終了までにもたらす利益の大きさを意味し、例えば「年間取引額×収益率×取引継続期間」といった形で算出される。顧客をファンにすることができれば、これらの項目を改善する効果を持つため、多くの企業がさまざまなファンマーケティングの施策を打っている。

 顧客をファンにする上で、成功事例として挙げられるものの1つが、交流イベントの開催だ。例えば、クラフトビールを手掛けるヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)は、「超宴」や「よなよな 月の道楽座」と呼ばれるイベントを各地やオンラインで開催。顧客同士やスタッフとの密接な交流を楽しみながら、クラフトビールの魅力を体験し学ぶ場を提供している。近年ではSDGs(持続可能な開発目標)に対する関心の高まりの中、社会問題や環境問題に取り組む企業やブランドのストーリーを、SNS(交流サイト)やイベントを通して伝える活動も盛んになっている。

「自慢屋のジレンマ」を緩和

 「顧客をファンにする」こととイベントの関係については、実証研究が進んでいる。

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