「AI(人工知能)に奪われる仕事」は単純作業であり、クリエーティブな仕事はAIに代替されないと考えられてきた。しかし、この「定説」が最近崩れつつある。キーワードは「拡張」。そしてAI時代の働き方のカギを握るのが「オペーク」だ。

AIとどう付き合ったらいいだろうか(イラスト:高谷まちこ)
AIとどう付き合ったらいいだろうか(イラスト:高谷まちこ)

 AIには、「自動化」と「拡張」の2つの機能があるといわれている。このうち「自動化」とは文字通り、単純作業をAIが自動で行うこと。よく「事務作業やレジ打ちなどの仕事はAIによって奪われる」とされるが、その論拠となっているのが、この自動化だ。

 では「拡張」とは何か。米オレゴン大学のアレックス・マレイらは「拡張的な技術とは、大規模データを解析することでパターンを発見し、問題解決の方法を提供する技術」と説明する。言ってみれば、AIが学び、考え、判断する機能のこと。身近な事例が米アマゾン・ドット・コムの「こちらもおすすめ」だろう。

 アマゾンでは、過去の購入実績からAIが機械学習を通して購入パターンを分析。その結果に基づき「おすすめ」を提案する。「おすすめ」が当たり前になったように、「拡張」の機能を実装したAIが世の中にますます普及していくことは間違いない。その結果、それまで「頭を使う仕事」を行ってきた人が、AIの導入後に、AIを操作するだけの単純作業に従事するようになってしまう可能性があるのだ。つまり、AIの「拡張」機能は、クリエーティブな仕事に対しても影響を与えるといえる。

 そのきざしは表れている。米ニューヨーク大学のカレン・アンソニーは、2021年の論文で、ある投資銀行が「それまで社員が行っていた分析を機械的に処理するアルゴリズムを備えたAIツール」を導入したケースの調査結果を発表。興味深いことに、一部の社員は「正確にツールを操作すること」にプライオリティー(優先度)を置くようになり、「分析を直接行うことを通して身についていた知識や経験」を蓄積する機会を失った。結果、人材としての付加価値が失われ、その多くが他業種への転職を余儀なくされた。投資銀行において、クリエーティブな「分析業務」をAIが担い、人が行うのがツール操作という単純作業になった結果だった。

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