上司が部下に「金メダル」級の活躍をしてもらうには、どうしたらいいか。東京五輪でメダルを獲得したトップ・アスリートの言葉や行動も参照しながら、最前線の経営学の成果から検証する。

さまざまな困難を乗り越えながら、成長していく(イラスト:高谷まちこ)
さまざまな困難を乗り越えながら、成長していく(イラスト:高谷まちこ)

 東京五輪でメダルを獲得した多くのトップ・アスリートは「コーチのおかげで……」と語っていた。そこには技術的な指導だけでなく、逆境を乗り越える上でマインド面からコーチが果たした役割も大きかったはずだ。

 コーチと選手の関係は、ビジネスの世界において上司と部下の関係になぞらえることができるだろう。上司が部下に「金メダル」の活躍をしてもらうには、どうしたらいいか。経営学の近年の研究成果には、そのためのヒントが多数ある。

部下の抱える「困難」には2つのタイプがある

 米アリゾナ州立大学のマーシー・キャヴァノーらは、職場のストレスについて定量研究を実施。分析の結果、ビジネスパーソンが直面する困難やストレスには、好ましいタイプとそうでないタイプが存在することを示した。20年ほど前の研究のため、最新の研究成果を職場に生かす本コラムの趣旨からするとややずれるが、先駆的な内容からその後の研究の理論的な柱となっているため、ここで紹介しておこう。

 例えば、以下の4つの経験は、多くのビジネスパーソンにとって、大きなストレスがかかるものとなるだろう。五輪で活躍するアスリートもそこまでにさまざまな困難を経験してきたに違いない。

(1)大きな責任を伴うプロジェクトのリーダーに任命される経験

(2)会社にとって未知の領域に挑むために、「走りながら学ばなくてはならない」経験

(3)課長と部長から別の指示を受けた平社員が、それを誰にも相談できないまま自分で調整しなくてはならない経験

(4)顧客のまっとうな要求に対して対応すると約束したのに、「社外に説明できないバカげた社内ルール」のため、対応できないことが後から発覚する経験

 4つの経験はビジネスパーソンにとって大きな困難をもたらす点では共通しているが、キャヴァノーらは2つに分けられると考えた。

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