経営学において近年、上司の「厳しさ」が果たす役割の研究が実証的に進んでいる。「厳しさ」は部下にとってプラスにもマイナスにもなるが、社員を育てる「厳しさ」とは、どのような「厳しさ」だろうか。3つの角度から考えてみよう。

「厳しさ」とはどうあるべきだろうか(イラスト:高谷まちこ)
「厳しさ」とはどうあるべきだろうか(イラスト:高谷まちこ)

 上司は優しくあることが求められる場面が増えている。日ごろから部下に気を使い、部下の良い点を探し褒め、安心と安全が担保された職場づくりをする。最近はそんな上司が「いい上司」といわれることが多い。

 一方、「『優しさ』を『甘やかすこと』と取り違えてはならない」「時には厳しくあることが必要だ」という見方も根強い。

 例えば、社員の創造性は意識的・無意識的に抱いている前提や枠組みを乗り越えることで発揮されるとされる。そのためには、上司が部下の持つ前提や枠組みを壊す「厳しさ」を示すことを避けて通れない。もちろん、部下がメンタルヘルスに不調をきたすようなハラスメントを、マネジメントやリーダーシップと称して行うことは許されないが、近年の経営学の研究において「厳しさ」が持つ好ましい影響について、研究成果が蓄積されている。

 「厳しさ」を部下の成長につなげるためには、何がポイントとなるだろうか。ここでは、部下の創造性を引き出す側面から、上司の厳しさのあるべき姿を検証してみよう。

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