経営学ではコロナ禍の早い段階の2020年3月~5月ごろに行われた調査に基づく研究発表が続いている。パンデミックという非日常では、それまでの日常で見えにくかった組織の本性や本質が明らかになる。ここから獲得した知見は「日常」のマネジメントに対しても大きな価値をもたらす。

コロナ禍で夫婦の分業にも変化のきざし(イラスト:高谷まちこ)

 コロナ禍で見えてきたことの1つがジェンダーをめぐる課題だ。男女平等の現在地があぶり出されたほか、女性がリーダーシップを発揮することの意義や価値について重要な知見が生み出されている。

新しい働き方で、伝統的な夫婦の分業に回帰

 新型コロナの流行は、夫婦間での仕事と育児の分業に対して様々な影響を与えている。強制的にリモートワークに転換したことにより、オフィスに通勤していた人が家で育児を行うことに容易になる一方、保育園や幼稚園の閉鎖によって家庭内での育児負担の総量が増加している。

 米ジョージア大学のクリステン・ショックレーたちは米国の6歳以下の子供を持つ共働きで夫婦を対象に調査を実施。その結果、3分の1以上の家庭が新型コロナの感染拡大によって「伝統的な分業パターン」に回帰したことが明らかになった。

 「勤務日を交互にする」「夫婦が2人ともリモートワークを行いながら育児をシェアする」といった「平等な分業」を選んだ夫婦も40%以上存在したが、むしろ注目すべきは「女性だけがリモートワークを行うことで育児の全てを担う分業」=押し付け型が22.2%、「女性が原則としてリモートワークと育児を行い、必要に応じて男性がリモートワークを取り入れつつ育児を手伝う分業」=手伝い型が10.4%となったことだ。これら2つを代表とする「伝統的な分業」へと3分の1以上の夫婦が回帰したことは、なかなかショッキングなデータだ。リモートワークという新しい働き方が極めて伝統的な分業の増加につながっているのは、不都合な事実といえるかもしれない。

 「伝統的分業」といえる「押し付け型」と「手伝い型」だが、ショックレーらの分析によると、家庭や仕事に対して異なる影響をもたらすという。すなわち「押し付け型」が夫婦間関係と仕事パフォーマンスを悪化させるのに対し、「手伝い型」は妻の睡眠時間をやや削りつつも、夫婦間の関係や仕事のパフォーマンスを改善させている。分かりやすく言えば、妻にリモートワークと育児を押し付けた上で、夫が「寛容な態度」で手伝う分業体制が、「物事を丸く収めてしまった」のである。「ジェンダー・ギャップ指数2021」において米国は30位と120位の日本に比べてはるかに男女平等が進んでいるはずなのに、である。

「伝統的分業」が3分の1に

 ドイツのハンブルク大学のラース・シュワーブらは神経科学的な調査を通して、ストレスや不安が高まるほど人は慣れ親しんだ考えや行動に依拠するようになることを示した。この研究からも伝統的分業が選ばれる理由が見えてくる。

 コロナ禍のジェンダーをめぐっては「ステレオタイプとリーダーシップの関係」についてもユニークな研究が出ている。

続きを読む 2/4 不安に慣れてもダメ、振り回されてもダメ

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