ロビー活動などを通した企業の政治への働きかけはどうあるべきだろうか。なかなか表に出にくい面があるが、成果を上げられるかどうかが業績を左右することもある。経営学の最前線では、ケーススタディーや定量データに基づく定量研究が積み上がっている。

企業の政治活動については近年、「ルールメイキング」や「パブリック・アフェアーズ」という言葉の下で、「イノベーションを起こすためには、企業は積極的に政治へと働きかけるべきだ」という主張が行われており、議員や役所への陳情や審議会・研究会での対話や提案といったロビー活動の重要性が指摘されている。
例えば、メルカリは社内に政策企画チームを持っており、既存の法律や規制によって価値あるサービスの提供が阻害され得る場合に、ルール改正の支援を目指しているという。チームの具体的な活動や成果を「merpoli(メルポリ)」というブログを通して発信しており、ルールメイキングのプロセスの透明性を高めることに注力している。
ヤフーで法務本部長や執行役員を歴任した別所直哉氏は著書『ビジネスパーソンのための法律を変える教科書』で、警察庁による古物営業法改正案が出されたとき、インターネットオークション事業の成長を阻害する可能性があると考えた別所氏が、さまざまな省庁や国会議員に掛け合うことで対処した一連のプロセスを生々しく描いている。別所氏は規制や法律を「あらかじめ与えられたもの」とするのではなく、社会の発展のために「変えるべきもの」として捉えて動いたという。
一方、企業の政治活動にあまり良いイメージを持たない人もいる。「ルールメイキングの名の下に行われたことが、本当に公共の利益につながっているか」を議論することは、このコラムの範囲を超えている。
それでも旧態依然のルールによってイノベーションが阻害されている場合、企業がそれを革新するプロセスに積極的に関わる必要があるのは間違いない。さまざまな実証研究を概観しながら「どうすれば、企業は政治を動かすことができるのか」「企業と政治のつながりはどこまで進めるべきか」を検討していこう。
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