部下のキャリアに対する相談や支援に頭を悩ませている上司が増えている。「部下がこれからどう働きたいのかについて相談にのってあげてほしい」と人事部などから言われたものの、多くの上司が「何をしたらいいのかが分からない」と頭を抱えている。どう対応したらいいだろうか。

上司が「部下のキャリア相談にのるように」言われるようになった背景には、終身雇用や年功序列といった日本型雇用の揺らぎがある。企業が社員の生涯にわたるキャリアの面倒を見られなくなる中、副業やジョブ型といった新たな働き方が増えている。また「ワーク・ライフ・バランスや多様な価値観を重視すべきだ」とする時代背景の下で、社員一人ひとりが持つキャリアのニーズに応えることへの要求の高まりもあるはずだ。
しかし、現場で働く上司からすれば「部下のキャリア相談にのるように」と言われても、そのための経験やノウハウがあるわけではない。人事部は「部下の多様なニーズについては現場の上司が一番理解しているのだから、相談にのるべきだ」というものの、実際には「現場に丸投げ」が多く、投げられた現場の上司からは「『あとはよろしく』なんて、会社や人事部は無責任ではないか」という声もある。
職場で「1 on 1」による面談の機会が広がっていることも大きく、その場をキャリア相談の場としても活用するように求めるケースが増えている。1 on 1をこれまで通り、目標の進捗管理などのためだけに利用しようとすれば、会社や人事部から「1 on 1の意義を理解していない。意識を変えるべきだ」と言われることすらあるという。その結果、部下の仕事の不満やキャリアの希望をただ聞き、受け止めるだけの「サンドバッグ」のような役割を負うようになった上司をよく見かける。これでは部下にとっても上司にとっても根本的な解決にはならない。
では、部下のキャリアにとって意味のある対話の場をつくるためには、何が上司に求められるだろうか。世界の経営学の知見を生かしながら、そのためのヒントを探ろう。
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