前回は「成長を諦めれば日本は消滅する」と訴える伝説の投資家ジム・ロジャーズ氏の話に耳を傾けた。今回ご登場いただくのは「もはや成長しなくてよい」と真逆の主張を展開する著名エコノミストの水野和夫・法政大学教授だ。どちらの意見に賛同する読者が多いだろうか。ではまたインタビューの最後にお目にかかろう。

水野和夫氏
三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストなどを経て、2016年から法政大学で経済学を教える(写真:都築 雅人)

ジム・ロジャーズさんは「移民を受け入れて人口を増やさないと日本は衰退する」と警鐘を鳴らしています。これに対して水野さんは「日本はもう経済成長を追い求めなくてもよい」と主張されていますね。

水野和夫氏:ええ、むしろ第2次世界大戦後の急成長の方が異常でした。経済成長を支えた人口の増加も、エネルギー消費量の増大も異常なペースでした。こんな異常が続けばそのうち日本列島が人で埋まることになりますし、化石燃料だって有限ですから、持続可能ではありません。

 いずれ異常な膨張を是正する時期を迎えます。日本はすでにその段階に突入しています。1990年代初頭にバブル経済が崩壊してからの景気低迷を日本人は「失われた30年」などと称していますが、私は正常化に向けたプロセスだと捉えています。

 日本だけではありません。英国の歴史家エリック・ホブズボームが、「遠い将来の歴史家は20世紀を『異常な世紀』として記録するだろう」という趣旨のことを述べているように、戦後多くの国が空前の経済成長を遂げました。そうして先進国となった国々は現在、軒並み経済成長率が落ちています。成長を前提とした近代が終わり、「ポスト近代」とも言うべき時代を迎えようとしています。その中で日本はドイツとともに、先頭を走っています。

そうなんですか?その根拠は?

水野氏:日本とドイツは他の先進国に先駆けて2016年から長期金利がほぼゼロで推移しています。その後フランスも加わり、現在では主要5カ国(G5)のうち3カ国がゼロ金利となりました。長期金利は将来の経済成長に対する期待を反映していますので、金利がゼロになったということは、長期的に持続可能な成長率がゼロになったことを意味します。

 ゼロ成長の社会では資本を新たに投下しても利潤は得られません。それだけ社会に資本があり余っているというわけです。例えば全国的にコンビニエンスストアが飽和状態となっています。新たに出店しても共食いを繰り広げるだけで、利潤を生むのが極めて難しくなりました。すでにある資本だけで暮らしのニーズを十分に満たすことができる「理想の社会」が実現したわけです。

 それなのに企業がさらに成長を追い求めようとすると、利便性を過剰なまでに追求したおかしなサービスや商品が登場します。例えばネット注文から1時間以内で商品が自宅に届くアマゾンのサービスなどは、本当に必要でしょうか。そのうちAI(人工知能)が顧客のニーズを予測して、注文する前に勝手に商品が手元に届くなどというバカげたサービスが出てきそうです。

 アパレル業界に目を向けると、日本では年間40億点もの衣料品が供給されており、そのうち10億~15億点が売れ残って廃棄されるそうです。メーカーが欠品を恐れて、過剰に生産しているわけです。このように成長を追い求めすぎると、およそ人々の幸福の増進にはつながらないような、過剰な資本が供給されます。

しかし経済成長を止めると、日本人の生活水準が下がりませんか。

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