EC(電子商取引)のイメージが強い中国アリババ集団。しかし『中国アリババの強さの源泉、「達磨院」とは何か』で触れた研究開発機関で先端技術を育て、様々な産業分野に影響を及ぼしている。製造と物流の分野について取り上げた前回に引き続き、今回はサービス業や自動車分野でのアリババの取り組みを取り上げる。

ホテル:顔認証でチェックイン

 杭州市にあるアリババ本社の横にある「菲住布渇酒店(フライ・ズー・ホテル)」。18年12月にオープンした近未来型ホテルである。そこかしこにデジタル技術を使っているのが特徴だ。

アリババ集団の未来型ホテル「菲住布渇酒店」
アリババ集団の未来型ホテル「菲住布渇酒店」

 中国人が事前予約していけば顔認証でのチェックインが可能だ。中国には国民が携帯を義務付けられているICカードの「身分証」があり、そのデータと照合しているようだ。

 外国人の場合は顔認証でのチェックインはできないが、スタッフがパスポートで入国日などをチェックし、最後に顔をスマホでパシャリと撮ると登録完了となる。チェックイン後も様々な場面で顔認証を利用する。エレベーターに乗り込んで目当ての階のボタンを押しても、ボタンは反応しない。ボタンの上にあるディスプレーが顔を映し出しており、カメラの位置をのぞき込んでから階数を押すと無事に反応するようになる。

ホテルのロビー。巨大ディスプレーと様々なロボットがお出迎え
ホテルのロビー。巨大ディスプレーと様々なロボットがお出迎え
エレベーターでは顔認証に成功するとフロアボタンが押せる
エレベーターでは顔認証に成功するとフロアボタンが押せる

 部屋のドアの正面にもカメラが設置されている。ここでもカメラをのぞき込むとカチッと鍵が外れる音がして、「お入りください」という音声が流れ、部屋に入ることができる。まだ新しさを感じるきれいな部屋に入るとテレビが自動的にオンになり、ホテルの利用説明の映像を流し始めた。部屋の隅にあるアリババ製のAIスピーカー「天猫精霊」に話しかけることで、様々なことができるという。

 アマゾン・エコーで「アレクサ」、グーグルのスピーカーに「OKグーグル」と呼びかけるのと同様、最初に「天猫精霊」と呼びかける必要がある。試しに「Wi-Fiのパスワードは?」と聞いてみたところ、すぐに教えてくれた。

 「カーテンを閉めて」と言えば自動的にカーテンが閉まり、「音楽をかけて」と言えば音楽が流れる。「もう寝たい」と言うと部屋の明かりを消してくれた。明かりを消してから目覚ましをかけ忘れていたことに気がついて「7時半に起きたい」と言うと、アラームも設定してくれた。

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