
「馬雲(ジャック・マー)氏はどこにいるのか」。アリババ集団創業者を巡る、この話題が再び世間をにぎわすようになってきた。
史上最大となる計345億ドル(3兆7500億円)の調達を見込んだ香港市場と上海市場への同時株式公開(IPO)の直前で、当局の横やりにより上場延期に追い込まれたアリババ集団傘下の金融会社、アント・グループ。マー氏が昨年10月末のイベントで発した政府批判と取れる言葉が、習近平国家主席の逆鱗(げきりん)に触れたとされる。
それから約3カ月にわたって雲隠れしたマー氏は今年1月末、慈善活動を目的とした教育イベントにオンライン参加した。2月5日に総額50億ドルの社債発行を控えたタイミングのことだ。拘束懸念まであったマー氏の登場は投資家に安心感を与え社債売り出しは上首尾に終わったが、それからマー氏の消息は再び途絶え、すでに2カ月近くがたつ。
その間、米ブルームバーグは関係者の話として「海南島でゴルフをしていたようだ」と伝えたが真偽は確認できない。英フィナンシャル・タイムズはマー氏のプライベートジェット機の移動記録を入手したと報じ、国内を移動しているようだと伝えている。浙江省杭州市にあるアリババ本社で働く同社社員は「ここしばらく顔を見せていないようだ」と語る。杭州市にあるマー氏がオーナーの1人であるバーの店員も「最近のことはよく分からない」と首をすくめるだけだった。
中国政府にアリババ追及の手を緩める様子はない。昨年12月には独占禁止法違反の容疑で、杭州市にある本社に捜索に入った。今後、史上最大の罰金が科される可能性が取り沙汰される。今年3月には、香港英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)」を含む、保有するメディアの株式を売却するよう迫っていることが明らかになった。金融当局が介入して事業見直しを進めているアントではCEO(最高経営責任者)だった胡暁明(サイモン・フー)氏が3月12日に辞任した。
目論見書で明らかになったアントの実態
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