役目を終えて不要になった人工衛星やロケットの残骸、宇宙ごみ(デブリ)。衛星などにぶつかれば、放送・通信をはじめ様々な地球上の経済活動に影響を与える。デブリ除去による宇宙の持続的な開発、いわば「宇宙のSDGs」に先陣切って挑むのが日本のスタートアップ企業、アストロスケールホールディングス(東京・墨田)だ。
「人生最良の日だ」。7月20日、米アマゾン・ドット・コムの創業者、ジェフ・ベゾス氏は叫んだ。この日、ベゾス氏が設立した米ブルーオリジンが、同氏を含む4人を乗せて初の有人宇宙飛行を実施した。短時間で地球に帰還、ブルーオリジンは有料で客を乗せる商業飛行の第1弾だと位置づけている。
ブルーオリジンの成功は、観光やエンターテインメントの分野で宇宙利用が進む時代の幕開けと言える。ハリウッドスターのトム・クルーズ氏は国際宇宙ステーション(ISS)での映画撮影を計画しており、20年5月に米航空宇宙局(NASA)のブライデンスタイン長官が「トムと撮影できることに興奮している」と言及した。
宇宙を巡る華やかな話題が続く中で、危機感を強める1人の日本人がいる。アストロスケールの岡田光信最高経営責任者(CEO)だ。

宇宙開発が進めば進むほど、デブリ除去が不可避になる。地上では、持続可能な開発目標を指して「SDGs」の標語が掲げられているが、宇宙でもSDGsは必要だ――。そんな思いで、デブリ除去の事業化を急いでいる。
3月下旬、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地。ここから日本や韓国の衛星を載せたロシアのソユーズロケットが打ち上げられた。ロケットは20秒余りで雲の上に消え、世界初のデブリ除去衛星「ELSA-d(エルサディー)」を無事軌道に届けた。この衛星は、デブリ除去の技術を開発してきたアストロスケールが、初めて実証実験のために打ち上げたものだ。
それから約5カ月後の8月、東京都墨田区にあるアストロスケールのオフィス。エンジニアらは実験準備の真っ最中だった。同社が進めるのは、宇宙に散らばるデブリを見つけ出し、除去する「EOL」と呼ぶサービスの開発だ。
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