ブルーオリジンが開発する大型ロケット「ニューシェパード」(写真:Blue Origin)
ブルーオリジンが開発する大型ロケット「ニューシェパード」(写真:Blue Origin)

通信事業でも狙う世界制覇

 激突の行方を占う2番目の要素は、宇宙に関連した新規ビジネスを立ち上げ、そこで圧倒的シェアを取ることだ。

 両社が狙うのが、数千もの衛星を打ち上げて地球を取り囲み、地球のほとんどの地域をカバーできるブロードバンド通信事業の立ち上げである。ブルーオリジンは19年、約3000の衛星を打ち上げて全人口の95%への通信サービス提供を目指す計画「Kuiper(カイパー)」を発表した。スペースXも同様の計画「Starlink(スターリンク)」を進行中で、21年2月下旬に新たに60基の衛星を追加し、軌道上にある同計画向け衛星の数はほぼ1000基となった。

 このブロードバンド事業は両社の既存事業との相乗効果が期待できる。これをどう成功させるかが3番目の要素になる。ベゾス氏のアマゾンはあらゆるデータを蓄積・分析できるクラウドサービスをアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)で手掛け、業界トップだ。ここにブロードバンド通信が加われば鬼に金棒。次代の「産業のコメ」となるデータ領域で世界制覇をもくろむ。

 マスク氏のスペースXも、テスラで開発を急ぐ自動運転で大容量かつ高速の通信は武器になる。地球全体を網羅する衛星を使った通信なら、世界中どこでも自動運転車を走らせられる。

 だがベゾス氏の戦略と比べると、見劣りは否めない。

 強烈な求心力で周囲を巻き込み、リスクを恐れず挑戦し続けることで未知の領域に風穴を開けるマスク氏。対するベゾス氏は長期的視点で全体を俯瞰し、最も効率的な戦略を立て競合を圧倒する。着想は同じ2人が、異なる経営の流儀で激突する。

 この戦いだけを見ても、宇宙事業の先に膨大で多岐にわたる「経済圏」が存在することが分かる。米モルガン・スタンレーの調査によれば、18年に3537億ドルだった宇宙関連ビジネス市場は、40年までに1兆ドルを超えるという。誰もが気軽に宇宙へ行ける道を2社が切り開くことで、「宇宙経済ビッグバン」が起きるというわけだ。

 そうなれば新しいゲームチェンジャーが生まれる余地も出てくる。米国だけではない。中国では16年設立の北京星際栄耀空間科技が、創業3年後の19年に商業ロケット「双曲線1号(Hyperbola-1)」の打ち上げに成功した。日本もうかうかしていられない。連載「ついに来た宇宙経済ビッグバン」では次回から日本の取り組みを見ていく。