軸足を一本化してまず狙うのは、目を見張る躍進を遂げる「ライバル」を打ち負かすことだろう。2002年にイーロン・マスク氏が立ち上げたスペースXである。

 マスク氏もまた、幼い頃に読んだSF小説に心を奪われ、「自分の手で人類を火星に移住させる」と誓ったカリスマ経営者だ。1990年代に複数のソフトウエア・ベンチャーを立ち上げ、巨額の売却益を手にした後、2004年にEV(電気自動車)メーカーの米テスラの経営に参画。同社を時価総額で業界トップの企業に育てた。そしてベゾス氏同様、膨大な資産を宇宙事業に注ぐ。

イーロン・マスク氏。テスラの事業は宇宙への足掛かりだという(写真:NASA/Science Photo Library/アフロ)
イーロン・マスク氏。テスラの事業は宇宙への足掛かりだという(写真:NASA/Science Photo Library/アフロ)

 宇宙を目指した理由も、実現のために歩んだ道のりも、うり二つの2人。そんな2人が21年、真っ向から激突しようとしている。

NASAの契約額は30億ドル

 2人がぶつかるタイミングと「宇宙空間で一触即発、米国を本気にした中国の挑発行為」で見てきた米中の宇宙摩擦が激しくなるタイミングが一致するのは、決して偶然ではない。米政府は敵国の脅威に対抗するため宇宙開発予算を拡大している。例えば、NASAの19年度の予算は215億ドルだったが、20年度に226億ドル、21年度には252億ドルに増えている。

 さらに11年、「コストがかかりすぎる」と議会の反対に遭い、スペースシャトル計画が中断されたのを機に、宇宙開発を民間企業に委ねる動きが米国で加速した。スペースXはそんな仕事を受注したからこそ、カネのかかる宇宙業界で生き延びてこられた。政府を取り巻く環境の変化は、米国で宇宙ビジネスが育つチャンスをもたらした。

 スペースXは未公開企業で売上高を公表していないが、NASAから請け負った有人宇宙船の開発で手にした金額は31億ドルとされる。他国の政府や企業から衛星の打ち上げなどを依頼された場合は、2段式商業用ロケット「ファルコン9」の1回の打ち上げで6000万ドルを受け取るという。