宇宙事業の民間委託の流れに乗り、民間初の有人飛行も達成した米スペースX。そこに待ったをかけるのが、米アマゾンCEOを今年退任するジェフ・ベゾス氏だ。2021年、2人の激突が着火剤となり、宇宙経済の大爆発が巻き起こる。

 1969年7月、当時5歳だった少年は、米テキサス州南部に牧場を持つ祖父の家を訪れ、寝転がって一緒にテレビを見ていた。

 画面に映し出されたのは、米航空宇宙局(NASA)の宇宙船アポロ11号が月に到着する様子だった。司令船が2人の宇宙飛行士を乗せた月着陸船を切り離すと、ゆっくりと月面へ。その約8時間後、船長のニール・アームストロング飛行士が搭乗口からはしごを下り、月面にぴょこんと飛び降りた。

 「いつか僕もロケットで宇宙に行くんだ!」。少年は目を輝かせながら、そう固く心に誓った──。

アマゾンCEOの退任を発表したジェフ・ベゾス氏。宇宙事業に本腰を入れる(写真:Blue Origin)
アマゾンCEOの退任を発表したジェフ・ベゾス氏。宇宙事業に本腰を入れる(写真:Blue Origin)

 少年の名はジェフ・ベゾス。言わずもがな、米アマゾン・ドット・コムの創業者兼CEO(最高経営責任者)で、2000年に宇宙ベンチャーの米ブルーオリジンを立ち上げたカリスマ経営者である。21年2月には、アマゾンCEOの退任を発表し、世間を驚かせた。「隠居か」との臆測も流れたが、違う。宇宙へと向かうのだという。

 単に幼少の頃に抱いた夢をかなえるためだけではない。人類が宇宙進出を果たさなければ、未来の子どもたちに地球という故郷を残せないという、強い危機感がある。

 ベゾス氏はかねて宇宙ビジネスに本気で挑む理由をこう説明している。「(世界の人口が増えて)このままいけば、地球の表面すべてを太陽光パネルで埋め尽くさないと必要なエネルギーを得られなくなる。だが、太陽系の他の惑星に行けば、人口が数兆人に増えても十分に賄えるだけの資源がある。でも時間がない。急がないといけない」

 1994年に立ち上げたアマゾンで得た1960億ドル(約21兆円)という巨万の富も、「カネのかかる宇宙ビジネスがあるから使うのに困らない」と笑う。ベゾス氏はオンライン小売りよりも宇宙事業に人生をかけている。

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