「中国は、東シナ海で周辺諸国に対して繰り返しているのと同じ挑発行為を、宇宙で米国に対して行っている」
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で宇宙安全保障を専門とするトッド・ハリソン氏は、宇宙で起きている米中摩擦の現状をこう明かした。
世間に知られるのは、両国による「偉業達成」の明るいニュースばかりだ。2月19日には米航空宇宙局(NASA)の探査車が火星の着陸に成功し、中国も同月10日に火星の軌道に探査機を到達させた。2020年12月に中国は無人探査機を月に軟着陸させ、土壌の採取にも成功している。友好的な技術争い……かに映るが、宇宙における両国の争いには「もう一つの顔」がある。

他国の衛星に接近して自爆し、その破片で標的を破壊する「キラー衛星」に、レーザーや電波で目標物を破壊したり機能停止させたりできる「指向性エネルギー兵器」――。こうした宇宙兵器を中国だけではなくロシアも保有し、その後を追うようにイランやインドも開発に取り組んでいる。
ドナルド・トランプ政権で国防長官を務めたマーク・エスパー氏は20年9月、航空関連のカンファレンスでこう中ロをけん制した。「かつて平和だった宇宙を戦場に変えたのはモスクワと北京だ。宇宙に兵器を配備し、我が国の軍事的優位性を奪おうとしている」
冒頭のハリソン氏によれば、中国は兵器をわざと米国の衛星に接近させたり、米国の衛星の機能停止を想定した軍事テストを繰り返したりして、挑発行為を続けているという。
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