2012年に徳島県で創業した移動スーパーのとくし丸(徳島市)が20年、全国47の都道府県への進出を達成した。地域のスーパーの加盟を募り、実際の販売はドライバーが個人事業主として担当。店頭の価格に10円上乗せし、スーパーとドライバーで5円ずつ分け合う「+10円ルール」など、バランスのいい収益配分モデルが功を奏している。

 客に商品を売り過ぎない、既存の個人商店の商圏には立ち入らない──。そんな配慮で成長を続けている移動スーパーがとくし丸だ。徒歩圏内に店舗がなく“買い物難民”となっているシニア層がターゲットで、2012年に住友達也氏が徳島県で創業。14年に初めて県外へ進出し、創業から8年で47すべての都道府県に700台を超える軽トラックを走らせるようになった。16年には野菜宅配のオイシックス・ラ・大地が子会社化。20年6月には、オイシックス出身の新宮歩氏が創業者である住友氏から社長を引き継いだ。

軽トラックに生鮮食品など約1200点を積み込んで地域を巡回する
軽トラックに生鮮食品など約1200点を積み込んで地域を巡回する

 新宮氏は「15年に高島(オイシックス社長の高島宏平氏)と徳島へ赴き、軽トラックに同乗させてもらった時のことを鮮明に覚えている。高島と『この事業はすごい、ぜひ一緒にやりたいね』と即決した」と振り返る。オイシックスの野菜宅配の顧客は30代前後の子育て世代が中心で、手薄なシニア向けのビジネスを求めていたこともあるが、それ以上に地域と共生し、長期的な関係性を築くビジネスモデルが秀逸だと感じたからだという。

創業者の住友達也氏からバトンを受け継いだオイシックス出身の新宮歩社長
創業者の住友達也氏からバトンを受け継いだオイシックス出身の新宮歩社長

 とくし丸が全国に広まったのは、自前でサービスを展開するのではなく、各地のスーパーから広く加盟を募ったからだ。とくし丸は移動スーパーのノウハウを提供し、移動スーパーに搭載する約400品目1200点の商品は各スーパーが供給する仕組みだ。とくし丸を運営するスーパーは現在140社超。20年にはリウボウストア(那覇市)の加盟で47都道府県を制覇し、イトーヨーカ堂のような全国チェーンも活用を始めた。20年7月の月間流通総額は13億円を超えている。

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