2022年入社の学生新卒採用もすでにピークを過ぎた。内定者の入社準備を始めている人事担当者もいるのではないだろうか。

 今年の新卒採用のニュースを改めて振り返ってみると、同じ人事マンとして悲しい出来事が起きていた。近鉄グループホールディングス(GHD)の採用担当者による就活セクハラ事件だ。職務上の地位を利用して、就活中の女子大学生と個別に連絡を取り、2人でホテルに行くなどして苦痛を与えたとして、新卒採用担当の男性社員が懲戒解雇処分となったことが大きく報道された。しかし、こういったいわゆる就活セクハラ事件は今年に限ったことではなく、毎年のように起きている。厚生労働省の委託調査(職場のハラスメントに関する実態調査)によると、なんと4人に1人(25.5%)が就活セクハラの被害経験があると答えている。問題なく就活を無事終えられる就活生が3人いたら、もう1人はセクハラ被害によって深く傷ついている可能性があるということだ。

 なぜ就活セクハラは繰り返されるのか。近年の事件の傾向を見てみると、その背景にはひと昔前とは異なる事情があるように思える。 

加害者の多くは若手社員

 まず近年の主な就活セクハラ事件をいくつか見てみる。

 2019年には24歳(当時)の住友商事の男性社員がOB訪問に訪れた女子大生を酒に酔わせて乱暴した事件が発覚。20年にはリクルートコミュニケーションズの30歳(同)の男性社員がOB・OG訪問のために利用されるマッチングアプリを通じて知り合った就職活動中の女子大学生に睡眠薬入りの飲料を飲ませてわいせつな行為をしたという事件が報道された。

 いずれの事件にも共通することは、セクハラ加害者となっているのが20~30歳代の若手社員であるということだ。

 実際、私も人事コンサルタントという立場から、就活生へ就職活動について振り返りのインタビュー調査をしているのだが、歳が近い異性のリクルーターから選考とは関係のないプライベートのことを細かく詮索されたり、個別の就活相談に乗るといって食事に誘われたりといったことが毎年のように報告されている。彼ら彼女らに「シニア層からはそういったことはないのか」と聞いてみると、むしろ役職者であるシニア層は非常に配慮して接してくれているように思う、という声が多い。

近年は若手男性社員が就活に臨む女子大学生に対してセクハラをしたというニュースが目立つ(写真:写真はイメージ、PIXTA)
近年は若手男性社員が就活に臨む女子大学生に対してセクハラをしたというニュースが目立つ(写真:写真はイメージ、PIXTA)

 採用活動で決定権を持つシニア世代は、部長や役員などの上級管理職だ。昭和~平成初期に社会人となった世代で、セクハラ・パワハラ問題でやり玉にあげられることも多い世代ではあるが、その一方で最近はコンプライアンス意識が徹底されている傾向も強くなっている。私が面接官向けの研修を行った際にも、面接で気を付けなければならない発言や、してはならない質問について、若手社員よりも敏感かつ慎重になっている人が増えている印象だ。

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