「年に1回、評価はされているが、何をどんな基準で評価されているのかは全く明かされない。賞与の額が高ければ、『評価が良かったんだな』と思うくらいで、何がどう評価されたのかは不明なまま。ましてやリモートワークだと、きちんと自分のことを見てくれているのか。不安しかない」

 本来マネジメントでは、教えてやらせてみること(指導)とその結果がどうであったかフィードバックすることは一対の関係だ。評価をしてもフィードバックはしない、では上司としての仕事を半分しか行っていないのと同義だろう。

リモートワーク下だからこそ、人事面談は評価とフィードバックをセットにするなどの丁寧さが求められる(写真:写真はイメージ、PIXTA)
リモートワーク下だからこそ、人事面談は評価とフィードバックをセットにするなどの丁寧さが求められる(写真:写真はイメージ、PIXTA)

 評価の背景を適切にフィードバックしなければ、部下は現状の強みと課題になっている部分とを正確に自己認識できない。認識できない課題は改善のしようがないし、強みを認識できなければ適切なキャリアパスを描くこともできないだろう。そして私が普段人事コンサルティングをしている中で、どの会社でも共通するハイパフォーマー(好業績社員)の特徴の1つは、紛れもなくこの自己認識の高さなのだ。

 対して、能力が低い人が周囲の評価よりも自己を過大に評価してしまうことを「ダニング・クルーガー効果」というが、これを避けるためにも上司の正確なフィードバックは非常に重要だ。

 以前コンサルティングで関わっていた大手専門商社では、リモートワーク導入後に通常出勤時よりも、日常的なフィードバックの機会が少なくなったことが課題だった。そこで、同社はリモートワーク導入前には30分だったフィードバック面談の時間を1時間にまで伸ばした。これに加え、「よく頑張ったね」「もう少しだね」といったこれまでは曖昧な表現に終始していたフィードバックをやめ、客観的事実に基づいたフィードバックを行うようにした。その結果、部下の評価に対する満足度が向上しただけでなく、従業員満足度も大幅に向上した。

 このことに付随して、最後にフィードバックに関する興味深い研究を紹介したい。

 とある実験で、被験者がある課題に取り組んでいる途中で、実験者は2つのフィードバックを行った。1つは「素晴らしい。このまま続けてください」というフィードバック。もう1つは「現状、●●個できました。平均は●●個です」というフィードバック。どちらのフィードバックが被験者のモチベーションを高めたか。答えは後者だった。

 人は、たとえ褒められても、その理由が曖昧なら納得はできないし、おべっかを使っているのではとさえ思い、モチベーションを下げることにもなりかねない。

 生身では向き合うことのできないリモートワークだからこそ、心で真摯に向き合い、データ化とフィードバックを通して、上司と部下の強固な信頼関係を築いていきたい。

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