パソコンの画面を介したオンライン上の会話は、情報が伝わりやすい半面、感情は伝わりにくい。感情は言語情報(言葉)よりも非言語的情報(アイコンタクトや身ぶり手ぶり、表情、頭髪、声色など)によって伝わるものだ。そして、人間のモチベーションは感情に左右されやすい。リモートワーク下でのマネジメントは、職場以上に部下の言葉だけでなく表情、顔色、声色に注意が必要だ。頭髪、服装の乱れなど、身だしなみからも部下のメンタルアラートは読み取れる。

 また、話を聞く上司はいつも以上に「部下の話を傾聴している感」を出すことが重要だ。ウェブ会議のバストアップの姿しか見えない中では、こまめに相づちを打つ、首を縦に振る、画面上に映る形で身ぶり手ぶりをするなど、細かな反応を積み重ねることが部下を孤独感から解放し、安心させることにつながる。

 部下からしてみれば、ただでさえ上司は普段から忙しそうで話しかけにくい。テレワークで顔が見えない状態では、なおさら「確認したいことがあるが、今連絡を取っていいものか……」と尻込みしてしまう。管理職としては、部下のこうした心理状態を予想して、いつも以上に相談、報告がしやすくなる姿勢を意識し、レスポンスも今まで以上に迅速にする必要があるだろう。

 テレワークの普及で変わるのはマネジメントの在り方だけではない。日本企業に長らく存在していた長時間労働を賛美する文化はいよいよ終焉(しゅうえん)を迎えるだろう。これまでのマネジメントスタイルでは、「長く働いている」ことが「仲間を多く助けている証拠」という認識の下で、長時間労働が賛美され、時として部下のモチベーションを上げる材料としても利用されてきた。

 だが、部下を直接的に見られないテレワークの環境下では、「少ない労働時間で多くの成果を上げること」、つまりは生産性の向上がこれまで以上に求められるはずだ。だが、そんな時代であればこそ、日本企業が大切にしてきた「助け合いの場」は生きる。テレワークが普及する中でも、日本企業の持っていた良さは今後も残していくべきだ。

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