世界中で依然として猛威を振るう新型コロナウイルス。ビジネスパーソンにとって最も大きな変化は、働き方ではないだろうか。この1年でテレワークは急速に浸透した。客先との商談や社内の打ち合わせはウェブ会議となり、会社で同僚と机を並べて行っていた業務は、自宅にいながら1人で行うようになった。

 浮いた通勤時間をプライベートに費やせるようになったことはテレワークのメリットの1つとしてよく挙げられる。その一方、「オンオフ」の切り替えを行っていた「通勤」という「儀式」がなくなったことで、初めのうちは「家では仕事に集中できない」「逆にゆったりくつろげない」という声もよく聞かれた。

コロナ禍でオフィスから人が消えた。テレワークが増えたことで、マネジメントの仕方も変わりつつある(写真はイメージ、PIXTA)

 とはいえ、コロナ禍の始まりから1年がたち、テレワークもすっかり定着した。一方で課題もある。最たる例は「テレワークのもとで上司が部下をどのようにマネジメントするか」という点だ。

 実際に、私のクライアントである中堅商社の管理職からは「コロナで週3日は在宅勤務が基本となり、部下の顔が見られなくなった。彼らがモチベーションを持って仕事に臨めているのか不安だ」という声も聞かれた。「見えない部下」をどうマネジメントするか悩みを抱えている管理職は少なくないだろう。

 そもそもテレワーク下でのマネジメントはコロナ前のそれとどのような点が異なるのだろうか。

「隣にいること」が前提のマネジメント

 日本企業はこれまで社員が目に見える、互いが側にいることを前提としたマネジメントシステムを築いてきた。

 日本型雇用の特徴ともいえる「メンバーシップ型採用」もその1つ。総合職という「仕事を固定化しない枠」で新卒を一括採用し、文字通りメンバーの一員として自社の文化になじませつつ、様々な業務を経験させる。国内の大手企業なら、3年~5年ほどの間隔で営業⇒人事⇒企画といった具合のジョブローテーションで、主に新卒から自社幹部を育成していく傾向が依然として強い。

 このように、日本企業は社員が固定化された役割を持たず、状況に応じてその役割を柔軟に変えることで組織を支えてきた。個々の仕事の境界線は曖昧で、チームワークで仕事をこなしてきた側面が強い。こうした体制を支えてきたのが「(部下や同僚が)隣にいることが前提のマネジメントシステム」だった。

 隣の席の同僚が困っていれば、「何か手伝えることはある?」と声をかけたり、入社して日が浅い新人が浮かない顔をしていれば上司や教育係でなくとも「どうした? 何かあった?」と軽く食事に誘ったり……。互いが側にいる環境下で、小さなコミュニケーション(雑談)を積み重ねることが、組織の公式構造(“自分の仕事はここからここまで”という職務定義や、“誰は誰から指示を受ける”という指揮命令系統など)の隙間を埋めてきたのだ。

 日本企業には部活動や運動会、飲み会などの社内行事が多い。これは互いが側にいる環境下で、困った時は助け合うための信頼関係を築く場としても機能してきたのだ。

続きを読む 2/3 「助け合う場」を創出する必要性

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