日経ビジネスが電子版や雑誌のシリーズ・特集でお届けしている様々なテーマをもっと深く知りたい。そんなご要望にお応えするため、記事のさらなる理解に役立つ書籍3冊を、本の要約サービス「flier(フライヤー)」がピックアップします。

 太陽光パネル、車載用リチウムイオン電池、電気自動車(EV)。これらはいずれも、世界で脱炭素に向けた動きが活発になる中で、需要が拡大している製品です。そして、少し前までは日本企業が高い世界シェアを誇っていた製品でもあります。

 しかし、いずれの製品についても、直近の世界市場で日本企業の存在感は薄れています。日経ビジネスは特集「グリーン敗戦 450兆円市場を奪い返せ」(雑誌版では11月1日号特集として掲載)で、拡大する脱炭素市場と歩調を合わせて成長する欧米企業と、乗り遅れている日本企業について取り上げました。

 世界各国が温暖化ガスの排出量削減に真剣に取り組む今、脱炭素市場は確実に成長する市場となっています。欧州の企業の一部はこの変化を先取りし、「脱炭素の巨人」へと変貌しています。

 一方、日本企業は冒頭でも触れた通り、「環境先進国」としてかつては脱炭素に欠かせない製品で高いシェアを持っていたにもかかわらず、現在はほとんどの企業がシェア上位から姿を消してしまいました。

 例えば太陽光パネル。2004年には、3割弱のシェアを握っていたシャープを筆頭に京セラや三菱電機も高いシェアを確保していました。ところが2020年の世界シェアは中国勢が上位を占めています。市場規模はこの間に100倍以上になりましたが、日本企業は市場の成長を取り込むことができませんでした。日本政府と電力会社が再エネ普及に対して消極的な姿勢を取り続け、日本メーカーも事業構造改革や投資をためらった結果と言えるでしょう。

 脱炭素による産業の大転換と、新たに生まれた市場を巡る覇権争いについては、以下で紹介する『超入門カーボンニュートラル』でも詳しく触れられています。

著者:夫馬賢治
出版社:講談社
定価:946円(税込)
出版日:2021年05月19日

レビュー

 日本は課題先進国でありながらも幸せな国だと思う。少子高齢化、過疎化、格差と貧困、安全保障など、抱えている課題は多岐にわたる。とはいえ、多くの人にとっては便利で住みやすい国といえるだろう。

 ところが、日本を含む地球全体は徐々に悪い方向に向かっている。その原因の一つが地球温暖化だ。地球の温室効果ガスが増加し、少しずつ気温が上がっている。温室効果ガスの代表的な存在は二酸化炭素だ。発電にしても工場にしても、実に多くの社会活動が二酸化炭素を生み出すが、このまま温室効果ガスの排出が続けば取り返しのつかない事態へと進んでしまう。

 そんななか、排出と吸収をプラス・マイナスゼロにしようとするのがカーボンニュートラルだ。この言葉はバズワードではない。カーボンニュートラルは政治、経済の世界でも重要視されている。世界の産業界はカーボンニュートラルを取り込み、前に進んでいる。欧州や米国はもちろん中国もだ。そんな世界の潮流に日本は乗り遅れており、いま急いで巻き返しを図ろうとしている。著者は世界と日本の現状と近未来の予測を示し、読者に警鐘を鳴らす。ただし、未来は暗闇だけではない。本書を読めば、経済活動とカーボンニュートラルが両立できるのだと、明るい希望をもてることだろう。同時に、カーボンニュートラルという言葉の持つ「破壊力」が伝わってくる。事業の戦略策定や就職先・投資先の選定にも欠かせないキーワードであることは間違いない。

 世界が大きく動いているのは代表的な再生エネルギーである太陽光発電ーやEVの分野だけではありません。石油由来のプラスチックの使用を控える「脱プラスチック」も広がっています。ここでも日本は、かつての「環境先進国」の地位から転落し、世界に後れを取っているようです。今回2冊目に紹介する『脱プラスチックへの挑戦 持続可能な地球と世界ビジネスの潮流』には脱プラスチックに動き出した世界の現状と日本がすべきことが書かれています。

著者:堅達京子+NHK BS1スペシャル取材班
出版社:山と溪谷社
定価:1,650円(税込)
出版日:2020年02月01日

レビュー

 地球温暖化や気候変動の問題は、私たちが思っている以上に深刻だ。日本ではようやくレジ袋の有料化が義務付けられようとしているところであり、切迫感はそれほど感じられないかもしれない。だが人類に残された時間は、思った以上に少ない。

 かつては“環境先進国”として名を馳せ、京都議定書を主導した日本。世界でもトップクラスの高い技術力を誇り、これまで環境に配慮した省エネ製品をたくさん世に送り出してきた。しかし“エコ”への意識はありながら、国レベルで意欲的な数値目標を打ち出すことには及び腰だ。どうやら日本人は、環境問題においては野心的になれないようである。温暖化対策に消極的な国として、日本が「化石賞」を受賞してしまったのも当然かもしれない。

 一方で世界の国々や企業は、高い数値目標を自らに課して、“脱プラスチック”に向けて積極的に取り組んでいる。今後はそうした国が世界をリードし、生き残れる企業になるだろう。“失われた30年”ですっかり日本の存在感は薄れてしまったが、このまま国際社会におけるリーダーシップを失ったままでいいのだろうか。

 日本人の「もったいない」と感じる精神や高度な技術力、緻密な管理運営能力は、かならずや持続可能な地球環境の実現に役立つはずだ。プラスチック汚染への警告だけでなく、日本が世界で担うべき役割をも示唆してくれる一冊である。本書を通じて、日本のあり方について考えてみてはいかがだろうか。

 日本の社会や企業の中には、まだどこかに「環境にまつわる活動は通常の活動とは別に行う」との意識があるのかもしれません。しかし、通常の活動に影響を与えない範囲で環境活動を行うという考え方では、急速に変化している世界に追いつくことはできず、結果的に企業の存続そのものを危うくしかねません。

 そして、それは地球環境保護や脱炭素に限ったことではありません。すでに多くの企業がSDGs(持続可能な開発目標)を意識した経営をするようになっていますが、なぜSDGsが必要で、どうして企業経営に組み込まなければならないかを根底から理解しなければ、日本企業は世界からますます後れを取ってしまうかもしれません。

 3冊目として紹介する『SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界』は、企業が生き残っていくためにはSDGsの考え方が不可欠であることを説いています。

著者:田瀬和夫 SDGパートナーズ
出版社:インプレス
定価:1,980円(税込)
出版日:2020年09月11日

レビュー

 SDGs(持続可能な開発目標)は、いまやビジネスパーソン、とりわけ経営者の必修科目といえるだろう。しかしSDGsと聞いたとき、大々的に掲げられる17の目標やカラフルなアイコンばかりに目がいっていないだろうか。実際に類書だと、そうした項目をいかに達成するのか指南するもの、つまりWhatとHowに焦点を当てたものが多い。

 それに対して、本書はSDGsの背景にある「世界観」(Why)を理解することが何より重要だと強調する。そしてそれを理解するために、SDGsが成立した経緯と人類史的な意義を丹念に追っていく。国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子氏のもとで働くなど、著者の外務省や国連での経験を踏まえた記述は非常に説得力があり、その世界観の崇高さに心を打たれずにはいられないだろう。

 なにより注目してほしいのは、本書がSDGsを「企業活動」として実装するべきとしているところだ。それはすなわち、SDGsを経営に練りこみ、継続的に利益を上げながら、社会的な善を実現するべきということである。著者は2014年、国連から民間に転じた。その理由は、継続的に価値が生み出されるような仕組み、つまり「利益」を生む組織でなければ社会を変えていくことはできないと、国連の活動を通じて痛感したからだという。

 とはいえ企業活動への実装は、そう簡単なことではない。そこには極めて戦略的で革新的な発想と、それによる社会的なインパクトを「つなげて」考える思考法が必要となってくる。そしてそれこそが、本書が詳述する『SDGs思考』なのである。

 日本企業が脱炭素などを含むSDGsを意識した経営に本当の意味で取り組むことができるか。それは日本の経済や社会の今後にも大きな影響を与える可能性が高いだけに、自分が働いている会社やよく利用する製品・サービスを提供する企業の活動なども注視していく必要がありそうです。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)
本の要約サービスflier(フライヤー)編集部
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