日経ビジネスが電子版や雑誌のシリーズ・特集でお届けしている様々なテーマをもっと深く知りたい。そんなご要望にお応えするため、記事のさらなる理解に役立つ書籍3冊を、本の要約サービス「flier(フライヤー)」がピックアップします。

 日経ビジネスは特集『仮想通貨狂騒曲』で、2021年に入って価格が急上昇した暗号資産(仮想通貨)について取り上げました。(週刊日経ビジネスでは6月21日号特集として掲載)。

 2021年1月29日。米テスラのイーロン・マスク氏がツイッターのプロフィル欄に「#bitcoin」と記載したことが仮想通貨の世界を大きく揺るがしました。世界で5600万人以上がフォローするマスク氏の影響力は大きく、3万ドル台前半だったビットコインの価格が4万ドルに近づいたのです。

 2月8日にはテスラがビットコインを15億ドル相当購入していたことを開示。同時にテスラ車をビットコインで買えるようにする方針も明らかにしました。さらに同月19日に「現金に比べればましな流動性の形態」だとツイートしたことでビットコイン価格が急騰。時価総額は初めて1兆ドルに達しました。

 ところが4月26日になると、2.7億ドル相当のビットコインを売却していたことが4月26日に判明。5月13日には、マスク氏が「ここ数カ月の電力使用量は狂気だ(insane)」とつぶやき、テスラでのビットコイン決済の中断を突如発表しました。ビットコインはこの日、10%以上下落。その後価格急落を受けて注文が殺到し、米コインベース・グローバルなど主要な交換業者が一時的に取引不能に陥ったことも手じまい売りを誘発しました。さらに米国や中国でビットコインの採掘(マイニング)や取引への規制が浮上したことで、ビットコインはピーク時の半値程度まで下がりました。

 投資対象としての地位が向上しかけていたビットコイン。しかし、通貨としての信頼を担保できないという現実を、図らずもマスク氏があぶり出してしまいました。

 しかし、この先も仮想通貨が単なる投機対象のままかどうかは分かりません。中米エルサルバドルのブケレ大統領は6月8日、「History!(歴史的だ)」とツイートしました。ビットコインを法定通貨にする法案が可決されたためです。

 各国の通貨当局は、中央銀行によるデジタル通貨「CBDC」の発行に動き出しています。主に送金用途で使われるカンボジアの「バコン」や中米の島国バハマの「サンドダラー」など、既にCBDCの利用が始まっている国もあります。中国では「デジタル人民元」の大規模な実証実験が進んでいます。

 ビットコインなどの仮想通貨からCBDCへと動き出した世界の潮流を追っているのが『アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行』です。

著者:中島真志
出版社:新潮社
定価:1,760円(税込)
出版日:2020年06月20日


レビュー

 クレジットカードやデビットカード、電子マネーなどを利用する機会もかなり増えた。以前と比べて現金を使うシーンは激減しているので、デジタル通貨と言われてもピンとこなかったのが正直なところだ。デジタル通貨が生まれても、それほど変わりはないのだろう、と。しかし、その認識はどうやら間違っていたようだ。

 ビットコインから始まった仮想通貨は、投資商品として人気を博し、その後の大暴落を経て、アルトコインやステーブルコインなどへと多様化してきた。そこにきて世界中の金融当局を騒然とさせたのが、フェイスブックが提唱したリブラ計画だ。リブラは中央銀行のビジネスモデルを参考にし、現行通貨制度の破壊者となる可能性を秘めていた。リブラの危険性に気付いた金融当局は一斉に懸念を示し、これに対抗している。

 一方、仮想通貨は価格変動が激しいビットコインから、価格が安定したデジタル通貨へと進化しようとしている。各国の中央銀行はデジタル通貨には懐疑的だったが、近年その姿勢を急変させている。その理由は、リブラなどの民間企業に通貨の発行主権を奪われることへの危機感だけではない。本書をお読みいただければ、それがよくわかるだろう。

 この本は、ビットコインからデジタル通貨へとつながっていく世界的潮流をわかりやすく説明してくれる良書だ。お金は日々の生活と密接に関わっている。つまり、本書は「すべての消費者」に関係するものである。

 ビットコインをはじめとする仮想通貨の基盤技術となっているのがブロックチェーンです。コンテンツと関連付けた「唯一無二」のデジタルデータの所有権を取引するNFT(非代替性トークン)にも注目が集まっています。またコーヒー豆などの農産物の流通経路を記録するのにブロックチェーンを使うなど、活用法が広がっています。

 同技術の現状と今後の展望などについてまとめているのが『ブロックチェーン』です。

著者:岡嶋裕史
出版社:講談社
定価:1,100円(税込)
出版日:2019年01月20日


レビュー

 ビットコインの登場は衝撃的だった。「サトシ・ナカモト」と称する謎の人物によって提唱されたブロックチェーンによって、信用ある貨幣を権力からも物理的実体からも独立して流通できるようになったのだ。しかもビットコインは取引データのかたまりである「ブロック」を作る計算競争、いわゆるマイニングの勝者に与えられる。

 もともと権力や国家に対抗意識が強い、コアなインターネットユーザーはビットコインに熱狂した。ある者はマイニングに注力し、ある者はビットコインを得るために金銭を投じ、またある者は既存の金融システムをブロックチェーンに置き換えるべきと主張した。

 その後の騒動はご存知の通りである。ビットコイン等の仮想通貨は投機の対象となってバブルが起こり、いくつかの取引所では仮想通貨の流出事件も発生した。現在、仮想通貨への投機熱はやや沈静化しているものの、ブロックチェーンへの期待は健在である。研究投資の案件公募などでは、しばしば研究テーマとして提案されている。

 そもそも、ブロックチェーンとは何なのか。取引の改ざんや名義の偽装などが技術的に起こらない仕組みを、どう実現しているのか。仮想通貨の取引所とは何をしているところで、なぜ流出した仮想通貨は戻ってこないのだろうか。このような疑問を解決し、現時点におけるブロックチェーンの問題と将来の展望を正しく知るには本書が最適だろう。夢想や熱狂から距離をおき、現実を正しく知ることこそ、本当の希望につながるのだ。

 デジタル通貨が普及すれば、私たちの生活も大きく変わるかもしれません。身近な生活への影響を含めて、新しいお金の仕組みを解説するのが『キャッシュレス経済圏のビジネスモデル』です。

著者:安岡孝司
出版社:日経BP社
定価:1,760円(税込)
出版日:2019年02月19日


レビュー

 いまや、コミュニケーションアプリ「LINE」を知らない人はいないだろう。そのLINEに、「LINEペイ」という機能が搭載されているのは知っているだろうか。LINEアカウントを通じて、決済・送金ができるサービスだ。「割り勘」機能のテレビCMを見たことがある人もいるかもしれない。便利だとは聞いても、「スマホでお金を扱うのは不安だ」と尻込みしている人もいるだろう。そんな人にこそ、本書を手に取っていただきたい。

 本書はLINEとメルカリという2つの身近なサービスを通じて、フィンテックや仮想通貨といった、新しいお金の仕組みを解説するものだ。世界的に見ればまだ現金主義の日本だが、今後はキャッシュレス化の影響を大きく受けていくだろう。これからFinTechビジネスはどのように変化していくのだろうか。本書ではお金にまつわる法律の問題や、仮想通貨への投資の仕組みとリスクなども解説されている。

 本書の大きな特徴は、刑事のお父さん、インスタグラマーのお母さん、就活中の娘の3人家族の物語にそって話が進められる点にある。「誰も現金を持ち歩かなくなったらスリがいなくなり、刑事の仕事もなくなるのでは?」「スマホゲームのルビーは電子マネーなのだろうか?」といった疑問が取り上げられる。「お父さんのコレクションをお母さんが無断でメルカリに出品」といった「ありそう」でハラハラする展開もあり、先へ先へと読んでしまう。金融や経済に詳しくない人でも、楽しく読める一冊だ。

 仮想通貨やデジタル通貨が経済や社会をどう変えていくのか。フライヤーがピックアップした書籍と日経ビジネスで未来を予測してみるのも面白いかもしれません。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)
本の要約サービスflier(フライヤー)編集部
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