日経ビジネスが電子版や雑誌のシリーズ・特集でお届けしている様々なテーマをもっと深く知りたい。そんなご要望にお応えするため、記事のさらなる理解に役立つ書籍3冊を、本の要約サービス「flier(フライヤー)」がピックアップします。

 日経ビジネスは特集『無子化社会「恋愛停止国家」の未来』で日本の少子化・人口減の現状を取り上げました(週刊『日経ビジネス』では5月24日号特集として掲載)。

 特集は、取材班が静岡県伊豆市にある「恋人岬」を訪れたときの様子から始まります。展望デッキからは駿河湾や富士山が一望できる恋人岬は毎年約25万人が訪れる人気の観光スポットです。伊豆市の観光情報サイトによると、この土地に伝わってきた福太郎とおよねの恋の物語が恋人岬という名称の由来になっているそうです。

 ところが、取材班が訪れてみると観光客はまばら。コロナ禍の影響により外出する人が減っていることはもちろんありますが、「恋愛人口」の減少も響いているのではないかと取材班はみます。以下、特集記事から引用します。

 こうした“恋人たちの聖地”系観光施設の集客に重要なのは「コロナ禍の外出制限緩和」ではない。むしろ影響を及ぼすのは、「恋愛中の人」の数。当然と言えば当然だが、コロナ禍がどうあろうと恋人たちがいなければ“恋人たちの聖地”に人は集まらないのだ。

 コロナ禍によって出会いの場はますます減っています。恋愛人口が減れば、それに関連する消費も減ると取材班は分析します。そしてすでに日本の大きな課題となっている少子化がますます加速しかねません。

 特集では、人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長が「コロナ禍によって少子化は、従来の予測より18年早送りされた」と警鐘を鳴らしています。コロナ禍の影響で結婚を延期したり、妊娠をためらったりする夫婦が増えているとみられ、河合氏は、2021年の出生数が過去最低だった2020年から大幅に減る可能性があると試算しています。

 日本は人口減をどのように乗り越えていけばよいのか。日経ビジネスの取材班はいくつかのキーワードとともに、対応策を提示しています。同様に、人口減をいかに乗り越えるかをテーマにしているのが、以下でご紹介する『人口減少社会のデザイン』です。

著者:広井良典
出版社:東洋経済新報社
定価:1,980円(税込)
出版日:2019年10月03日


レビュー

 「2050年、日本は持続可能か?」これが本書のテーマだ。日本はいま危機的状況にあるが、それをどれだけの日本人が自覚しているだろうか。政府の債務残高は1000兆円にのぼり、格差が拡大。貧困層が増え、人々は所属するコミュニティを失い、社会的に孤立している。日本の現状は「持続可能性」とはほど遠い。

 こうした状況を打開するには、社会のデザインを変えていかなければならない。著者は東京などの大都市にすべてを集中させるのではなく、地方に生活の拠点を分散させていくことが重要だと主張している。地域で経済が循環し、ゆるやかなコミュニティ的つながりが感じられる社会を構築する、人々の生活の質や幸福度が上がるような都市設計だ。ローカルから出発し、それをナショナル、グローバルと積み上げていくのが、今後の世界標準のスタイルとなっていくという予想である。

 日本はいまだ「景気回復によっていずれすべての問題が解決する」という幻想を捨てきれていない。しかし問題はもっと根本的なところにある。社会の在り方そのものを変えていかなければ、日本は持続可能にならないだろう。

 日本に住む人にとって、これは他人事ではまったくない。ここに述べられている危機的状況は他でもない、私たちが暮らしているこの国の話なのである。

 日経ビジネスの取材班が人口減を乗り越えるためのキーワードの1つとして提示しているのが「機械化」です。人口減による人手不足はすでに起きていますが、進化し続けているテクノロジーによって解決できるというわけです。

 では人口減といった社会の変化に加え、テクノロジーは今後どのように進化していくのでしょうか。日本マイクロソフト元社長の成毛眞氏がテクノロジーや社会、環境問題などの未来について分析した1冊が『2040年の未来予測』です。

著者:成毛眞
出版社:日経BP
定価:1,870円(税込)
出版日:2021年01月12日


レビュー

 今から20年後の2040年、私たちの住む世界はどうなっているか。まだ先のことのような気もするが、そのときはあっという間にくるだろう。

 少子化による人口減や、経済成長の鈍化はこれまで何度も指摘されてきた。しかし、目に見える変化がないことから、感覚的にピンと来なかった人も多いだろう。要約者もその一人であるが、本書を読んで恐ろしくなってしまった。想像以上に大変な未来が待っている、と──。

 だが、希望もある。テクノロジーの進化だ。10年前にスマートフォンを持っていた人はほとんどいないはずだ。しかし、今では誰もが“スマホ”を持ち、生活のインフラにすらなっている。社会全体のデジタル化が進み、オンライン会議もあたりまえになりつつある。今後はあらゆる分野でAIが利用されていくだろう。

 政府やさまざまな機関が示す「未来予測」は、あくまで現状の延長を想定していて、テクノロジーの発展は加味されていない。いつの時代も、未来を変えてきたのは新しいテクノロジーだ。本書によると、20年後には空飛ぶクルマやドローンによる宅配も普通になっているという。私たちの予想を超える「近未来」が、目の前にやってきているのだ。

 ここ1年は新型コロナウイルスに振り回され、自然災害も立て続けに起こった。これまで以上に先の予測が難しく、1年先のことすら見通せない日が続く。しかし、未来の萌芽は「今」にある。私たちの未来が少しでも明るいものになるように。本書をその道しるべとして活用してほしい。

 少子化問題の解決が難しいのは、一人ひとりの人生の選択の積み重ねだからです。結婚するのかしないのか、子供を持つのか持たないのか、持つとしたら何人なのか。いずれも個人の意思が尊重されるものです。中には経済面での負担などを考えると、結婚して子供を持つのはとても無理と考えている人もいるかもしれません。そんな方に読んでほしいのが以下でご紹介する『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』です。

著者:山口慎太郎
出版社:光文社
定価:902円(税込)
出版日:2019年07月30日


レビュー

 「子どもが幼いうちは母親がつきっきりで育てるべき」「ミルクでなく、母乳を与えたほうがよい」「離婚した夫婦の子どもは不幸になる」――テレビやインターネットなどでよく耳にする話だ。本書では、経年のデータを検討することによって、科学的な「確からしさ」をわかりやすく紹介し、こういった「常識」にメスを入れていく。本書を読めば、政府統計にすら数字のマジックが潜んでいることや、これまでの研究の多くが示してきた「結果」を鵜呑みにしてはいけないということがわかるだろう。

 著者は本書で、著者自身の意見を提示しつつも、決してそれを押し付けることはない。データに基づいていくつかのあり方を示した上で、どうすれば自分(たち)がより「幸せ」になれるかを自分(たち)で考えるように水を向けているところに、著者のデータに対する誠実さが現れている。それは、「あとがき」に記された次の言葉からも読み取れる。「すべての物事には良い側面もあれば、悪い側面もあります。だから、それらを総合的に考慮した上で、あなたと家族にとって何が幸せにつながるのかを、あなた自身が選びとってください。科学的研究は、私たちがよりよい選択をする上での助けにはなりますが、『何が自分にとっての幸せなのか』までは教えてくれません」

 これから結婚しようとしている人、子どもをもうけようとしている人はもちろん、未来を担う子どもたちを等しく支えるこの社会の構成員のみなさんに、ぜひお読みいただきたい一冊である。

 人口減は日本ですでに起こっている現実です。人が増え、経済も成長していた時代とは異なる社会の中で、どのように生きていけばいいのか。フライヤーがピックアップした書籍と日経ビジネスを参考に考えてみましょう。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)
本の要約サービスflier(フライヤー)編集部
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