日経ビジネスが電子版や雑誌のシリーズ・特集でお届けしている様々なテーマをもっと深く知りたい。そんなご要望にお応えするため、記事のさらなる理解に役立つ書籍3冊を、本の要約サービス「flier(フライヤー)」がピックアップします。

 日経ビジネスは特集「ファンづくりの極意 薦めたいブランド1万人調査」を掲載しました。人口減少など事業環境の変化が激しく、企業は成長しにくくなっている中で、重要性が見直されているのが、特定のブランドを支持するファンの存在です。全顧客の2割である優良顧客(ファン)が売り上げの8割をもたらす例が多いことから、ファンづくりが今、マーケティングの中心課題となっています。

 「今回のコロナ禍ではっきりしたことがある。それは固定のファンに支えられているお店は、やはり強いということだ」。日経ビジネスの特集の中でコミュニケーション・ディレクターの佐藤尚之氏は、こう語っています。

 売り上げを伸ばしたければ、新規顧客を開拓せよ──。以前はこう言われていた時代もありました。しかし今の日本では、新規顧客の開拓は年々、難しくなっています。日本の人口推移を長期で描いたグラフを見ると、右肩上がりで人口が増えていた時代は既に終わりを告げ、2060年には今よりも4000万人近く減ってしまいます。

 さらに、経済が成熟するにつれて機能や価格で他社の製品やサービスとの違いを出すのは難しくなっています。今の時代に重要なのは顧客との「感情的なつながり」との意見は多いようです。今は既存のファンを大切にし、中長期的に自社の売り上げや価値を上げていくべきだと佐藤氏は主張しています。この考え方が「ファンベース」です。佐藤氏が『ファンベース 支持され、愛され、長く売れ続けるために』で詳しく記しています。

経営戦略 マーケティング
著者:佐藤尚之
出版社:筑摩書房
定価:968円(税込)
出版日:2018年02月10日

レビュー

 ファンベース──それは企業や商品の支持者であるファンを大切にし、中長期を視野に売上や価値の上昇を狙うという考え方である。

 これからの時代、ファンベースなしで安定して売上を持続させるのは難しくなる。売上の大半は実のところ、ファンが支えているからだ。いまのところ新規顧客の獲得だけに力を入れている企業が多い。しかし単発施策や短期キャンペーンが仮にうまくいき、運良く話題になったとしても、その効果は一時的ですぐに忘れ去られてしまう。それでは貴重な予算や労力がもったいないではないか。

 もちろんそうした施策のすべてがムダというわけではない。だがここで重要なのは「ファンを育てる」という観点だ。私たちが追求するべきなのは、ファンベース・マーケティングともいうべきものである。

 本書ではファンベースが求められている理由に始まり、具体的な施策の取り入れ方について、さまざまな事例とともに解説される。これまでの成功例や失敗例に触れることで、自社で実施している取り組みが効果的かどうか、そしてファンベースをどのように自社に取り入れればよいかが、より鮮明にイメージできるようになるはずだ。

 メーカーや事業会社に留まらず、小売、メディア、行政など、あらゆる業界でファンベースは必要だと著者は語る。この未来を見据えたマーケティング手法、いち早く脳内にインストールしてみてはどうか。

 今回の特集で日経ビジネスは、競争の激しい10の分野について1万人の消費者を対象に「顧客推奨度(ネットプロモータースコア、NPS)」の調査を実施しました。対象となっている商品やサービスを友人などに推奨したいかどうかを尋ね、推奨度を算出したものです。

 対象分野は「ECサイト」「携帯電話サービス」「定額制動画配信」「スマホ決済アプリ」「自動車」「デジタルカメラ」「スポーツブランド」「コーヒーチェーン」「コンビニエンスストア」「テーマパーク」です。

 このうち「定額制動画配信」でトップになったのが米国発のネットフリックスです。世界各地で制作しているオリジナルコンテンツや徹底したパーソナライズ化が消費者を捉えて離さない要因のようです。ネットフリックスのような強力な動画配信サービスに加え、現在は個人でも動画コンテンツなどを発信できます。こうした中で日本のエンターテインメント業界も熱烈なファンを持つ「推しエコノミー」を目指すべきだと説くのが『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』です。

著者:中山淳雄
出版社:日経BP
定価:1,980円(税込)
出版日:2021年10月18日

レビュー

 日本のエンタメ業界の現状と生存戦略について書かれた本書は、意外にも占星術の話題から始まる。占星術の領域では2020年12月、200年に一度の節目を迎え、金銭・物質・権威が重視される「土の時代」から知性・コミュニケーション・個人が重視される「風の時代」になったのだという。

 エンタメ界にも200年に一度の変化が起きている──著者はそう主張する。良質なコンテンツをつくるのは、もはやテレビ局やゲーム会社だけの仕事ではない。いまや個人もコンテンツを供給する側になり、米国や中国など、巨大資本を持つ国の参入も著しい。著者によると、そんな変化の渦中にある日本のエンタメ業界が目指すべき終着点は「推しエコノミー」だ。

 『鬼滅の刃』のテレビアニメが、全国21チャンネルで同時配信されるだけでなく、配信サイトでも公開されたのはなぜか。『半沢直樹』の続編において、ツイッターで毎回「祭り」が起きていた理由とは。「萌え」はなぜ「推し」に変わったのか──本書では、こうしたトピックの分析を通して、日本のエンタメ業界の生存戦略を考えていく。

 コンテンツ供給側に立っているビジネスパーソンにとっては、時代性や世界情勢、国内企業の強みが明らかになる、お得な一冊である。『鬼滅の刃』や『半沢直樹』といった身近な話題が多く、またマーケティングなどに生きる示唆も多いため、業界に身を置いていない方も興味深く読めるだろう。コンテンツを愛するすべての方に一読をおすすめしたい。

 日経ビジネスの1万人調査によると「テーマパーク」の分野では東京ディズニーリゾートが首位、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが2位となりました。そんな中、スコアを急速に改善させているのがリニューアルした西武園ゆうえんちです。

 2021年5月に実施したリニューアルでは1960年代の日本をテーマに、昭和の街並みを再現した商店街を新たな「顔」に据えました。若者には新しく、シニアには懐かしい。そんな世界観を打ち出し、10~20代のZ世代も取り込んだようです。

 デジタルが当たり前の中で育ってきた若い世代を中心とする新しい消費者の心をどうつかむのか。そのヒントとなりそうなのが『世界のマーケターは、いま何を考えているのか?』です。

著者:廣田周作
出版社:クロスメディア・パブリッシング
定価:1,848円(税込)
出版日:2021年12月01日

レビュー

 要約者は地域のコミュニティで、ミレニアル世代やZ世代の人と話す機会がある。Z世代とは、一般的に1990~2000年代終盤までに生まれた世代を指す。本書で著者が指摘しているように、十把一絡げに特定の世代を語ることの危うさを承知のうえで、あえていうならば、彼ら・彼女らはどこか「寂しがりや」の面がある。同時に、政治や環境といった大きな物語に疲れているようにも感じられる。

 Z世代の特性に寄り添いながら、企業はどのように顧客との関係性を築いていけばよいのだろうか。こうした課題に対し、世界のマーケティングの「いま」と「未来」を提示してくれるのが本書だ。

 第1章ではマーケティングを取り巻く社会の現状と課題について、第2章ではZ世代の特徴と彼らが抱える問題についてわかりやすく解説されている。また第3章ではマーケティングの主要な潮流が「コミュニティ」「デジタルキャンプファイア」「メタバース/マルチバース」など13の切り口で紹介されている。そして巻末では『Z世代に支持されているブランド60』が掲載されているという充実ぶりだ。

 読み進めるにつれ、世界的な消費者インサイトをどう読み解くのか、それをもとにマーケターは何をすべきなのかが見えてくる一冊だ。マーケティングの新たな可能性にふれたい方にぜひ手に取っていただきたい。

 いつの時代も消費者のニーズを捉えるのは難しいですが、インターネット上の仮想空間「メタバース」の広がりなどもあって、消費者の関心はますます細分化しています。ファンづくりの要諦は、マーケティングに関係する人だけでなくビジネスに携わる全員が知っておいてもよさそうです。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

この記事はシリーズ「本の要約サービスflier×日経ビジネス 記事をより深く知るための3冊」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。