日経ビジネスが電子版や雑誌のシリーズ・特集でお届けしている様々なテーマをもっと深く知りたい。そんなご要望にお応えするため、記事をさらに深く理解するのに役立つ書籍3冊を、本の要約サービス「flier(フライヤー)」がピックアップします。

 2021年5月15日、中国の無人探査機「天問1号」が火星への着陸に成功しました。同国にとっては初めての火星着陸となります。「宇宙探査の重要な一歩で、火星に初めて中国人の痕跡を残した」。習近平(シー・ジンピン)国家主席は着陸成功後にこうコメントした。火星への着陸は旧ソ連、米国に続き3カ国目。表面の探査が実現すれば、米国に続いて2カ国目となります。

 それに先立つ21年2月、米国は探査車「パーシビアランス」の火星着陸を成功させています。4月には超小型ヘリコプターの飛行試験にも成功しています。

 様々な分野で摩擦が生じている米中両国ですが、夢とロマンがあふれる人類最後のフロンティア、宇宙についても例外ではありません。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で宇宙安全保障を専門とするトッド・ハリソン氏は「中国は、東シナ海で周辺諸国に対して繰り返しているのと同じ挑発行為を、宇宙で米国に対して行っている」と語ります。

 両国の争いは、宇宙が「夢とロマン」の対象から現実の利益を争う場になってきたことを示しています。経済メディア日経ビジネスでは、特集「ついに来た宇宙経済ビッグバン」で、いよいよ身近なものになってきた宇宙開発の現状をまとめました(週刊「日経ビジネス」では3月15日号特集として掲載)。

 宇宙という新たな市場をいち早く開拓し、利益を得ようという動きは企業にも広がっています。日経ビジネスの特集「ついに来た宇宙経済ビッグバン」では、その一例としてトヨタ自動車が宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと協業して開発している有人与圧ローバ「ルナ・クルーザー」を取り上げています。

 そのほかソニーやパナソニック、三井物産といった日本を代表する大企業が宇宙ビジネスへの関心を高めています。また、宇宙をテーマにしたスタートアップも続々と登場しており、中小企業にとっても宇宙は新たなビジネスの機会が生まれる可能性を秘めています。

 そんな宇宙ビジネスの可能性についてさらに考えていく上で参考になるのが『宇宙ビジネスの衝撃』です(書籍のタイトルまたは画像をクリックするとフライヤーのサイトに移動します)。

著者:大貫美鈴
出版社:ダイヤモンド社
定価:1760円(税込)
出版日:2018年5月9日


レビュー

 かつて宇宙開発は、各国の国家機関が担うものだった。NASAやJAXAといえば、誰もが知っているだろう。しかし、現在ではグーグル、アマゾンといった「BIG5」と呼ばれるIT企業をはじめ、多くの民間企業が、独自に開発や投資を行う分野へと変貌を遂げた。私たちの生活を日々、劇的に変化させる宇宙ビジネス。その現状と未来について、宇宙ビジネスコンサルタントの著者がわかりやすく解説してくれるのが本書だ。

 宇宙ビジネスに、これほどまでに注目が集まるのはなぜか。その1つは、宇宙にネットワークを張り巡らせることで手に入る、「地球のビッグデータ」が存在するからだ。企業が巨額の投資を惜しまないのは、それらのデータが第4次産業革命をも駆動させるほどのものだからだ。つまり、私たちの生活を激変させる可能性が大いにある。

 宇宙ビジネスと聞くと、自分には縁のない未来の話だと思う人もいるかもしれない。だが実際には、すでに農業、畜産業、漁業といった多くの産業で、宇宙から届けられたデータの利用が急拡大している。宇宙は、過去にできなかったことを可能にする「可能性の宝庫」だ。そして、火星移住もゆくゆくは夢物語ではなく、現実化できるかもしれない。

 宇宙ビジネスに縁がないと思っている人にこそ、時代に乗り遅れないためにも、いち早く読んでいただきたい一冊だ。

(ライター:西広海)

 宇宙ビジネスの主役になるべくしのぎを削っているのが、米テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏と米アマゾン・ドット・コム創業者兼CEOのジェフ・ベゾス氏の2人です。

 21年4月、日本人宇宙飛行士の星出彰彦さんが搭乗する新型有人宇宙船「クルードラゴン」が打ち上げられました。民間の宇宙船として機体を初めて再利用しての打ち上げとなり、これまでよりも低コストで人が宇宙を往復できるようになりそうです。クルードラゴンを開発した米スペースXのCEOを務めているのがマスク氏です。

 電気自動車や宇宙船など世界を変えるイノベーションを起こすマスク氏とはどんな人物なのか。その半生を描いたのが『イーロンマスク 未来を創る男』です。

著者:アシュリー・バンス 斎藤栄一郎(訳)
出版社:講談社
定価:1,870円 (税込)
出版日:2015年09月15日


レビュー

 現在、全世界から最も注目を浴びている経営者は、イーロン・マスクだと言っても過言ではない。凄まじい頭脳と溢れ出る情熱、使命感を持って、ロケットや電気自動車のイノベーションを実現してきた男、イーロン・マスク公認の伝記が登場した。マスクはどんな半生を駆け抜けてきたのだろうか?

 本書では、いじめにあっていた少年時代、祖国、南アフリカからの逃避、駆け出しの経営者時代、ペイパル創業を経てスペースX、テスラモーターズ、ソーラーシティといった企業を軌道に乗せるまでのマスクの悪戦苦闘ぶりが、鮮やかに描き出されている。

 「人類の火星移住を実現させる」という壮大な夢に向かって、次々と前代未聞の目標を打ち立て、果敢に挑んでいく姿は圧巻である。例えばマスクは、1基の打ち上げに240億円もかかるロケットを宇宙に飛ばそうとする。粘り強い取り組みの結果、直近の目標である国際宇宙ステーションへの物資補給に成功した。もう一つの挑戦は、電気自動車「ロードスター」の開発である。一時は経営破綻寸前と言われたが、何とか息を吹き返し、快進撃を見せている。マスクは、幾多の失敗にも屈せず、「大風呂敷を広げているだけ」という周囲の非難をものともしない。

 読みごたえのある一冊であるが、マスクの人生を深く掘り下げ、その舞台裏を明るみに出す著者の魔術にかかったかのように、本書の世界観に引き込まれ、あっという間に本書を読み終えてしまうだろう。テクノロジーの限界に立ち向かう稀代の経営者の軌跡をぜひ堪能してほしい。

(ライター:松尾美里)

 一方、アマゾンのベゾス氏も以前から宇宙に関心を寄せていました。21年2月にはアマゾンCEOを退任すると発表し、宇宙ビジネスにさらに力を注ぐようです。

 同氏は2000年に宇宙ベンチャーの米ブルーオリジンを立ち上げましたが、現時点ではスペースXに水をあけられています。しかし、ベゾス氏はECサイトの激しい競争を生き残り、アマゾンを巨大企業に成長させた人物です。そのベゾス氏の考え方とアマゾンの成長サイクルについて分析しているのが『ベゾス・レター アマゾンに学ぶ14カ条の成長原則』です。

著者:スティーブ・アンダーソン カレン・アンダーソン 加藤今日子(訳)
出版社:すばる舎
定価:1,980円(税込)
出版日:2019年11月22日


レビュー

 インターネット黎明期、ビジネスチャンスを狙って数々のECサイトが誕生した。そのうちの1社がアマゾンである。他の多くのECサイトは失敗に終わり消え去ったが、アマゾンは生き残り、今では時価総額1兆ドルを超える巨大企業に成長した。

 消えた企業とアマゾンとの違いは何だったのか。その理由は本書を読むと明確になるだろう。

 本書の著者は、保険業界で35年以上のコンサルティング経験のあるビジネスコンサルタントである。いわば、事業におけるリスク研究のプロだ。著者は本書で、アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾスが1997年から2018年の間に株主向けに書いた21通のレターを丹念に読み込んで分析。ベゾスはリスクを避けるのではなく、自分の利益につながるよう戦略的に活用する独特の思考法を持っていると指摘する。そうしたベゾスの思考法がアマゾンの企業文化に大きな影響を与えているのだ。

 著者はさらに、アマゾンが取り組むすべての事業に共通する、とある「成長サイクル」の存在を発見した。アマゾンの急成長の秘密は、この成長サイクルにあるのだという。その内容は、本書でたっぷり語られる。

 著者は、どんな業種のどんな事業でもこの成長サイクルが役立つと強い口調で書いている。35年以上にわたり、公的機関から民間企業までさまざまな企業を見てきた著者がそう言うのだから、十分な説得力がある。この成長サイクルを知りたい人は、ぜひ本書を手に取っていただきたい。

(ライター:若旦那)

 現在の世界のビジネス界をリードする2人の天才起業家が目を向ける宇宙。フライヤーが紹介する3冊と日経ビジネスを読めば、この先ビジネスが本格化していく新たな市場について、理解が深まることは間違いありません。

本の要約サービスflier(フライヤー)編集部
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