岸田文雄政権は外交、内政の両方で、難しいところに立たされている。世界情勢も変化する中、首相である岸田氏のリーダーシップがますます求められている。

岸田文雄首相は支持率の低迷が続く(写真=ロイター)
岸田文雄首相は支持率の低迷が続く(写真=ロイター)

 まず外交を見てみたい。ここのところ、北朝鮮がミサイルを発射する頻度が増えている。これは米韓合同軍事演習への反発などが理由といわれる。

 一連の動きから感じるのは、軍事はエスカレートする、ということだ。軍事演習やデモンストレーションは相手国の反発を生み、より過激な行動を誘発しやすい。すると、さらにそれに対抗する動きも起き、連鎖的に拡大していくのである。

 こういうエスカレーションが起こらないように抑制することが外交の重要な役割の一つだと思うのだが、僕の見る限り、米国のバイデン大統領はそれができていない。米国の中間選挙について、選挙前に劣勢が予想されていた民主党のバイデン氏には余裕がなかったのかもしれない。岸田首相が今後バイデン氏に働きかけ、北朝鮮の金正恩氏と話し合うように伝えるべきだ、と僕は思う。

前大統領のトランプ氏は2024年の次期大統領選への出馬を表明(写真=ロイター)
前大統領のトランプ氏は2024年の次期大統領選への出馬を表明(写真=ロイター)

 米国の中間選挙では、選挙前に多くのメディアが予想したほど共和党が伸びなかった。それでも前大統領のトランプ氏は先日、2024年の次期大統領選への出馬を表明した。共和党内に反トランプ派が増えているともいわれるが、現在のところ共和党内にトランプ氏以上の求心力を持つ政治家はいない、と僕は思う。トランプ氏の考え方は反グローバリズムだが、それを歓迎する層が一定数いるということだろう。

 一方の中国は、習近平総書記(国家主席)が先日の共産党大会で、台湾統一のためには武力行使も辞さない姿勢を示した。ただ、中国のような国では国内に向け、外交面で強気の発言をせざるを得ないところがある。中国も米国と衝突することは損だとわかっている。だからこうした姿勢に対しては静かに見守るべきだと思う。