日本は世界のワクチン競争から完全に取り残されてしまった。先進国の接種が完了した割合(5月8日時点)を比較すると、イスラエルは58.6%、米国は32.6%、英国は24%である一方で、日本は1%弱と大きく後れを取っている。なぜ、こんなことになってしまったのか。

菅義偉首相はワクチン確保の失敗を認めている(写真:共同通信)
菅義偉首相はワクチン確保の失敗を認めている(写真:共同通信)

 政府が米ファイザー製ワクチンを承認する前、厚生労働省が安全性を確認するために同社から数百人分のワクチンを確保した。この時点で、厚労相が官僚たちに手配を任せっぱなしにしていたせいで大幅に遅れていた。ワクチンメーカーと直接交渉を行わず、代理店との交渉しかやっていなかったのである。

 調達した後も、副作用の有無を検証してから承認するまでに1カ月以上かかってしまった。これについて菅義偉首相は、「ワクチンの確保は大失敗だった」と認めている。僕は菅首相から直接その言葉を聞いている。安全性を重視することは大切だが、今回のワクチンについては時間がかかり過ぎた。結果的に日本が取り残されてしまったことは、日本政府の大失態と言える。

厚労省を前に、改革はなかなか進まない

 2020年6月、自民党議員で党の新型コロナウイルス感染症対策本部長代理を務める武見敬三氏と、同じく自民党の元厚労相である塩崎恭久氏が僕のところにやってきた。「日本の今の感染症に関する法律はずっと前のもので、矛盾だらけだ。危機時には総理大臣が何の権限も持たない。抜本的な改革が必要だ」と言う。

 ただ、改革に対して厚労省が全面的に反対していて、進められなかった。他の自民党の議員たちと厚労省との関係が深過ぎて難しい。あれから1年近くが経過するが結局、抜本的な改革はいまだに実現していない。

 2020年、新型コロナウイルスの感染が広がった当時、安倍晋三内閣の厚労相は加藤勝信氏だった。ところが安倍首相は、加藤氏がいるにもかかわらず、当時経済再生担当相だった西村康稔氏を新型コロナ担当相に任命した。

 なぜそんなことをしたのかと安倍首相に聞くと、「加藤氏は厚労省の言いなりで、何も動くことができない。だから、厚労省に意見ができる西村氏を立てた」と言った。

 しかし、結局は西村氏も厚労省に取り込まれてしまい、今度は菅首相がワクチン担当相として河野太郎氏を任命した。ここで、ようやくワクチンの確保が進み始めたのである。

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