ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いている。政府与党内は現在の状況をどう捉えているのか。またどう動くのか。田原総一朗氏が独自のニュースソースを生かしながら解説する。

ロシアのプーチン大統領は展望のないままの進撃を続ける(写真:ロイター/アフロ)
ロシアのプーチン大統領は展望のないままの進撃を続ける(写真:ロイター/アフロ)

 ロシア軍によるキエフ制圧の危険が迫っている。僕はウクライナの首都キエフをソ連時代に訪れたことがある。モスクワで世界ドキュメンタリー会議が1965年に開催されたとき、東京12チャンネル(現テレビ東京)のディレクターだった僕は招待を受けた。そのとき、主催者から「ソ連の地方都市を見てほしい」と案内されたのが、キエフだった。歴史的な建物が並ぶ、非常に美しい街だった。

 そもそもなぜ、ロシアはウクライナ侵攻に踏み切ったのか。

 ソ連はゴルバチョフ大統領の時代にペレストロイカ(改革)が引き金となってロシアとなり、ウクライナを含めたいくつもの国が独立。このうちエストニア、ラトビア、リトアニアなどは北大西洋条約機構(NATO)に加盟したのである。そしてウクライナも憲法に「NATO加盟の希望」を記している。

 キエフからモスクワまでの距離は実は東京から九州までよりも近く、ウクライナがNATOに加盟したら、ロシアにとって脅威になる。ロシアのプーチン大統領はウクライナの非加盟の保証を求めたが、ウクライナのゼレンスキー大統領は加盟を目指すという旗を降ろさなかった。そしてプーチン氏は軍事介入に踏み切ったのである。

 

 プーチン氏には大きな誤算があった。ロシアの軍事侵攻前、ウクライナにおいてゼレンスキー氏の支持率は30%を割り込んでいた。ゼレンスキー大統領は汚職撲滅などを公約に掲げていたが、実現までの道のりは遠く、就任後は支持が下がり続けていたのだ。このためプーチン氏としては、軍事介入すれば容易に親ロシア派政権が樹立できるのではないかと考えたのである。

 ところが、いざ軍事介入してみると、ゼレンスキー氏の支持率は急回復し、90%超まで跳ね上がった。ウクライナ軍の反撃によってロシア軍の軍事侵攻が想定したほどのペースで進まないといわれ、多くの専門家は、「プーチン大統領は冷静な判断力を失っている」と分析している。

 このため、ロシアにとっては展望が全くない状況だ。軍事侵攻について世界中から批判の声が上がり、ロシア国内でも反戦デモが起こっている。それでも、ここでもしロシア軍が撤退したら、おそらくプーチン氏といえども、身の危険が迫るという見方がある。このため、プーチン氏は進撃を止めることはないとみられている。

 西側諸国や米国はロシアに対して経済制裁を強化している。だが、米国のバイデン大統領は、経済制裁をいくら強化したとしてもプーチン氏を変えることはできない、と分かっているようだ。だからといってNATOが軍事的に立ち上がる姿勢を示せば戦線が拡大しかねない。米国民から大反対の声が上がり、それはバイデン政権の崩壊につながるかもしれない。このため、バイデン氏が自ら動くことはないだろう。

 もう一つ、バイデン氏の頭を悩ませているのはトランプ前大統領の動きだ。バイデン氏によるアフガニスタンからの米軍撤退をトランプ氏は「米国史上最大の外交政策の敗北」と糾弾。ウクライナ問題についてもトランプ氏は、経済政策も含めたバイデン氏の失敗の連続にプーチン氏がつけ込んでいる、と批判する。バイデン氏の支持率はじりじり下がり、40%を切る水準まで落ち込み、秋の中間選挙ではバイデン氏の民主党は負けるとの見方が強まっている。

 実はこれを待ち望んでいるのはプーチン氏だろう。20年の米大統領選でロシアがトランプ氏の当選に向けた世論工作を試みたと米情報機関が発表しており、このままではやがてプーチン氏が望むようにトランプ氏が政権を奪い返す可能性があるからだ。

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