日本はこれからどこへ向かうのだろうか。各分野のキーマンの最前線の声を集めると同時に、長い取材経験を生かして分析。政治、経済など様々な角度から、今後、日本がどうなっていくのかを読み解いていく。

支持率が下がっても、菅義偉首相に諦めの気持ちはない(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)
支持率が下がっても、菅義偉首相に諦めの気持ちはない(写真=代表撮影/ロイター/アフロ)

 世界における日本企業の存在感が急速に弱まっている。世界の企業時価総額ランキングを見ると、1989年にはトップ50のうち日本企業は32社が入っていた。ところが僕の手元の資料では、2020年にはほぼ姿を消した。日本企業の存在感が、この30年間で一気に落ちてしまったのである。

 また、かつて日本は、「経営はともかく、現場は非常に優秀だ」といわれていた。その証拠に、技能五輪国際大会では2001年から2015年までの間、金メダルの獲得数がおおむね3位以内に入っていた。ところが2017年には3個となり、2019年には2個になってしまった。減少が目立つ。マクロでみても、GDP(国内総生産)を国別に比較した場合、ランキングの落ち込みが目立つ。

 なぜ、日本企業はここまで転落してしまったのか。

 僕が信頼している国会議員に、自民党の齋藤健氏がいる。齋藤氏によると、この原因は“日本的経営”に問題があると言う。

 日本的経営とは、大卒学生の一括採用、年功序列、終身雇用だ。これがなぜダメなのかと言えば、閉鎖的な経営につながり、挑戦を避けるようになってしまうからである。正社員として入社すると、平社員から係長、課長、部長と昇進してゆき、うまくいけば役員、社長に就任する。つまり、社員たちは会社に入った時点で、昇進が第一の目的になってしまうのである。

 すると、否が応でも上司の言うことが第一優先となり、正論が主張できなくなってしまう。典型的な事例として、東芝が長期間にわかって飾決算を続けていた事件があった。中堅以上の社員であれば粉飾だと明らかに分かるはずだが、内部から告発する声は上がらなかった。そんなことをやれば、左遷になってしまうからである。

 役員も皆、社員から昇進した人材ばかりだ。すると、おのずと協調性が重視されるようになり、それがエスカレートすると同調圧力に発展する。結果、幹部は常に社員から昇進した者たちで占められ、閉鎖的な組織ができあがってしまうのである。

 日本には「空気を読む」という言葉があるが、同調圧力に変わってしまえば、閉鎖的で挑戦ができない経営体制が生まれてしまう。外の空気が全く入らず、視野が狭くなる。

 第3次産業革命、いわゆるIT革命によって世の中が大きく変わる時代が到来している中で、どの企業も積極的に様々なチャレンジをしていかなければならない。ところが、そんな声すら上げられない企業がたくさんあるのだ。日本企業は、こんな状態のままでいいのだろうか。

 雇用にも問題がある。1990年代にバブルが崩壊して国内景気が急激に悪化した当時、日本的経営では正社員を簡単に解雇することができなかった。だから、政府は規制緩和を実施して、解雇のハードルが低い非正規社員の数を大幅に増やしてきた。今では、労働者の4割が非正規雇用だ。これではますますチャレンジが難しくなる。まさに終身雇用が足を引っ張っているのである。

 このように日本的経営による弊害が重なることで日本企業の競争力が弱まり、世界における存在感が失われていったのである。

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