石原氏の安全保障における議論がリアリティーを帯びてきた

 2000年代後半、日本の安全保障に大きな変化が訪れた。

 第2次世界大戦以後、米国は世界一「強い国」であり、最も「豊かな国」でもあったから、米国人は「米国は世界の国々を守る使命がある」と考えていた。第2次大戦で欧州が戦場と化し焼け野原になった後、米国は膨大なお金を出して欧州経済復興援助計画「マーシャルプラン」を打ち出した。アジアも戦場になったが、米国は膨大な資金を投じて復興させた。さらに米ソ冷戦時代には、「世界の秩序を守るため」に、民主主義の国に向けて大量の軍隊を送った。

 それがオバマ大統領は「米国は世界の警察をやめる」と宣言。さらに次のトランプ大統領は「米国第一主義」を打ち出し、「米国さえよければいい」と主張した。

 これにより日本は安全保障を米国に委ね続けるわけにはいかなくなった。20年5月、僕は当時の安倍晋三首相に「日本の安全保障をどうすべきか考え、主体的に取り組まなければならない」と伝えた。安倍氏は「おっしゃる通りだ」と述べたが、その直後、体調を崩して退任した。次の菅義偉首相にも同じように伝えたが、コロナ対応でいっぱいとなり、安全保障に着手できないまま退任してしまった。

 岸田文雄内閣が発足し、ようやく安全保障に取り組めるのではないかと期待していたが、その矢先に石原氏が亡くなった。今になって、石原氏の安全保障に対する主張は、極めてリアリティーを帯びてきたように思う。

 石原氏ほどまでに自分の意見をまっすぐに主張し、全面的に戦える政治家はほかにいなかった。長い交流を振り返っても私利私欲がない人物だった。

バイデン大統領はロシアと本気で争う意志はないだろう

 さて、このところ緊張が続くウクライナ問題について言及しておきたい。

 ウクライナの現リーダーは、どちらかというとNATO(北大西洋条約機構)加盟に賛成している。もし、ウクライナがNATOに加盟したら、ロシアにとっては大きな危機である。このため、プーチン大統領は、それを何としてでも阻止しなければならないと考えている。そこでウクライナとの国境に大規模な軍隊を派遣した。NATO側に、ウクライナが加盟しないことを表明しろと圧力をかけたのだ。ところがNATOは、「加盟するか否かはウクライナが主体的に決めることであって、我々が拒否するわけにはいかない」と主張した。

 しかし、僕には欧州のNATO加盟国にプーチン大統領と対等に話し合える人物がいないように見える。ドイツのメルケル前首相なら話し合えたかもしれないが、20年12月に退任している。このため、NATOは「ウクライナが決めることだ」と言ってロシアとの対峙から逃げている。

 本来であれば、こういう場合にプーチン大統領と渡り合うのは米国のバイデン大統領のはずだ。ところが、肝心のバイデン大統領は内政で行き詰まっており、米国内での支持率は40%ほどになってしまった。

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