日米地位協定改正のきっかけにすべきだ
日米地位協定に関連して、沖縄問題に触れておきたい。まず言えることは米国にとって日本国内の米軍基地は、そもそも日本を守るためにあるのではない。米国の世界戦略、特に対中戦略において最重要拠点であることだ。その意味では、米国は米中対立問題を考える上で日本の役割に大いに期待しているし、日本を尊重している。バイデン氏が大統領に就任したとき、真っ先に首脳会談を行ったのが日本だったのもこのためだろう。
これまで米国の大統領が就任すると、最初は英国、フランスなどの首脳と会談をしていた。日本はせいぜい4、5番目だった。ところが、バイデン氏は就任後、最初に日本の首脳と会談をしたのである。いかに日本の存在を重視しているかが読み取れる。
米国は日本側に対して、在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる「思いやり予算」を積み増すように要求している。日本側の負担は増えていくが、これに応じることで発言力を強められるとも言える。それは歴代首相のみならず、岸田首相もよく分かっているはずだ。
米軍基地は今後どのようにすべきか。非常に難しい問題だが、僕は、日米同盟はやはり必要だと思う。2014年7月、臨時閣議によって、従来の憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認することが決まった。これに対し、多くのメディアが反対した。僕は大手メディアの幹部らに、「集団的自衛権の行使に反対したら、日米同盟が壊れてしまう。それでいいのか」と尋ねた。
日米同盟があるからこそ、日本は米国によって守られているのは間違いない。これがなくなったら、日本は核兵器を持たなければならなくなる。原爆を投下された国である日本が核を持つなど、あってはならないことだ、と戦争を知る僕は強く思う。
このため、米軍基地は日本から撤退させなくていい、というのが僕の考えだ。ただ、すべての基地を維持する必要はない。日本の米軍基地の中で、米国にとって最も重要なのは、戦略拠点である沖縄の嘉手納基地と神奈川の横須賀基地である。日米同盟の維持を考えると、この2カ所は残す必要がある。逆に言えばほかの基地は必ずしも必要ではないと僕はみている。
一方、日本の発言権をもっと強めるためには、日米地位協定の改正が必要だと僕は思う。
僕は安倍晋三元首相に「東京の横田基地を返還させるよう、日米地位協定を改正すべきではないか」と話したことがある。20年5月、米国防総省の反対があって改正は実現しなかった。その後、安倍氏は首相を辞任したため、この話は進んでいない。
ここへ来て今回、在日米軍からコロナ感染が広がったのではないかとの話が出ているのに対し、岸田首相は、日米地位協定の改定は考えていないとの考えを示している。しかし、僕はむしろこれを日米地位協定を改正するきっかけの一つにすべきではないかと思う。繰り返すが、日本は米軍にとって最重要拠点であるからこそ、主張すべきことはきちんと主張しなければならない。
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