欧州は温暖化ガス削減で先行し、関連産業の育成を進めてきた。新型コロナウイルスの感染拡大以降に、温暖化対策のギアを上げている。欧州は何を目指しているのか。

欧州が温暖化ガス削減で、世界を引っ張っている。ただし、その実績や目標を冷静に見る必要がある。
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は2020年9月、欧州議会で演説をすると議場から拍手が起こった。1990年に比べた2030年の温暖化ガスの削減目標を従来の40%減から55%減に引き上げることを表明したからだ。さらに、「30年目標は野心的だが、達成できる。そして欧州の利益になる」と強調した。
EUから離脱した英国も、対抗するように続いた。従来は30年の削減目標が90年比で53%減だったが、20年12月にこれを68%減に引き上げた。同国では30年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する予定だ。ジョンソン英首相は、「我々はどの主要経済よりも早く排出量を削減するという野心的な目標を掲げ、主導権を握っていく」と表明した。
いずれも、大胆な政策ではあるが、数字を並べると日本と条件が異なることが分かる。1990年の温暖化ガス排出量を基準にすると、EUは再生可能エネルギーの普及などで2019年に24%削減している。英国は石炭火力発電を削減したことに加え、製造業が国外に流出しているために同43.8%も削減した。
これに対して、日本は90年度に比べわずか5%減にとどまっている。東日本大震災による原子力発電所の事故があり、温暖化ガスの排出量が少ない原発の稼働率が下がったことに加え、この期間に再エネの導入や省エネが欧州ほど進まなかったことも大きな要因だ。日本は温暖化ガス排出量を30年に13年度比で26%削減する目標を掲げるが、これを90年比に換算すると18%減にとどまる。欧州と日本が50年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げるが、現状の削減状況は大きく異なる。
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