「日本は戦後、内へのコロナイゼーション(植民地化)を推し進めてきた」
震災後、国と被災地の関係についてこう表現した識者がいる。被災地の“原子力ムラ”の起源を追求した『「フクシマ」論』の著者で、立命館大学衣笠総合研究機構准教授の開沼博氏だ。
1960年代以降、エネルギー政策の転換で貴重な地盤産業である炭鉱が衰退。膨大な経済支援を見返りに原発建設が進んだ福島は、まさに「もの言えぬ東京の植民地」だった──。そんな見方だ。

震災から10年を経ても「そんな被災地と国の関係に、変化があったとは思えない」と開沼氏は話す。「震災直後こそ地域の自立に向けリーダーシップを発揮しようとした自治体や団体もあったが、多くは一時的な動きに終わった。地方が生き残るため国に自発的に従属せざるを得ない構造は、今も変わっていない」(開沼氏)
規制や既得権益の問題以上に開沼氏が懸念するのが被災地の人材不足だ。「被災地ではカネとモノの問題はかなり解決し、中央との情報格差もなくなりつつある。だが、ヒトがいない。高度人材を育む教育機関も不足しており、新産業計画なども人材面で頓挫する例が少なくない」(同)
社会システムの変容を拒んだ国
これでは理想の地方分権の実現も遠い。「この10年でむしろ日本全体が思考停止し、社会システムの変容を自ら拒んでしまったようにすら見える。すべてが中央集権的な国では、地方に新産業など生まれないままだ」。「東北学」の権威として知られ、政府の東日本大震災復興構想会議委員を務めた学習院大学教授の赤坂憲雄氏もこう話す。
では、被災地はどうすべきなのか。
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