原発なき後の浜通りや福島県の産業をどうするかは重い課題だ。

 東電によると、震災前の10年7月時点で、富岡町・楢葉町にある福島第2原発も合わせた計10基で働いていた県内在住の東電、協力会社の社員は約1万人いた。それが20年12月時点では約4000人減った。

 国は、福島県の産業基盤を築く目的で「福島イノベーション・コースト構想」を進めている。浜通りを中心に廃炉、環境・エネルギー、ロボット、航空宇宙、医療などの分野で様々な関連施設が設けられている。

水素エネルギーづくりの拠点には、水素をためる高いタンクが目立っていた
水素エネルギーづくりの拠点には、水素をためる高いタンクが目立っていた

 浪江町を海沿いに北へ進むと、再生可能エネルギーを利用した世界最大級の水素製造装置を備える「福島水素エネルギー研究フィールド」が現れる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導し、東芝エネルギーシステムズ(川崎市)、東北電力、岩谷産業が参加。20年2月末に完成した。

新産業構想、大型の雇用創出につながるか

 この敷地には太陽光パネルがびっしりと設置され、そのパネルで生み出した電気を使い、水を電気分解して水素を取り出す。そして、そびえ立つ8本の白いタンクにためているのだ。この水素を再生可能エネルギーとして燃料電池バスなどに使っていこうという計画だ。

 浪江町からさらに南相馬市へと北上すると、次に見えてくるのはドローン開発などを支援する「福島ロボットテストフィールド」だ。20年3月に全面オープンし、企業や大学は滑走路や風洞棟、試験用橋梁など21の設備が使える。陸海空で活躍するロボットの開発を支えるため、155億円の建設費が投じられた。

左に見える化学プラントを模した設備では、ドローンが人間の代わりに点検する実験などができる
左に見える化学プラントを模した設備では、ドローンが人間の代わりに点検する実験などができる

 福島イノベーション・コースト構想推進機構の金成啓太氏は「22ある貸しオフィスのうち20が埋まっている」と、企業や大学の利用熱が高いことを説明した。デンソーがドローンによる橋梁点検の技術開発を進め、空飛ぶクルマで注目を浴びるスカイドライブ(東京・新宿)も利用している。

 今見たどちらの施設も研究開発型だ。どこまで企業が集まり、雇用を生み出す産業に育っていくか、まだ見えない。

 浜通りを歩いて見えたのは、モザイク状の復興だ。元の姿に復旧した交通インフラがある一方、帰還困難区域のように人が入れない地域がある。ブルドーザーで土地をならすように、物事がきれいに足並みをそろえて進むということにはなっていない。

次ページ 震災10年という言葉への不安