
電力自由化の一環で20年度までに電力大手は送配電網を分社化したものの、資本関係は維持され、実態はそれまでと変わらない。被災地の住民がいくら「電力の地産地消」を目指しても、電力大手のさじ加減1つで翻弄される構図はこれからも続く――。これが佐藤会長の考えだ。
「再生エネルギーの導入で先行する欧州にも既得権益者はいる。だがEU(欧州連合)政府や各国が政策を遂行する強い意志で彼らの既得権益に立ち向かっていく傾向が強い」。エネルギー戦略研究所の山家氏はこう解説する。
むしろ既得権益を打ち壊すドイツ
例えばドイツでは、既存の送電会社に対し、再生可能エネルギー事業者を優先して送電線に接続するよう国がルールを策定。送電ルートの容量がオーバーし発電量を落とす場合でも、再生可能エネルギー事業者は最後まで発電量が保護される仕組みになっている。
日本でも20年、経済産業省が送電網の利用について、将来的に再生可能エネルギーを優先させる方針を示した。ただ、山家氏は「大きな方針変更ではあるが、経過措置的な対応で時間を要するのは確実。本格的な実現はいつごろになるか見通せない」と話す。
かくして「再生可能エネルギーの一大聖地」とは程遠い状況にある10年目の福島。もっとも、「既得権益と規制」により先送りにされている被災地の改革はエネルギー関連だけではない。新産業育成計画もその1つだ。
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